川崎エッセイ 絵解き世間之事情 その6       HOME

 雨が降っていないとき、傘を持って出かける気になりにくい。結局、降られなかったこともあるため、持ち歩く面倒さから解放されたくなる。また、降っていないと、傘を置き忘れやすい。

 傘を持たずに外出しても、コンビニなどでビニール傘が売られているため、降り出しても、困らないこともある。それを数回繰り返していると、ビニール傘が溜まってしまう。

 傘の溜まりやすい場所があるようで、例えば喫茶店とか傘立てなどだ。これも雨が降っていないとお客さんが傘のことなど忘れてしまうようだ。持ち主もすぐに気づけば取りに戻るが、クルマでしばらく走ったあととか、では、引き返すのが面倒だ。

 先日、喫茶店に入り、しばらくして雨が降ってきたとき、店の人にその種の忘れ物傘を貸してもらったことがある。ビニール傘をなくしても被害届を出す人は滅多にいない。しかし取りに来る可能性もあるので、店としては保管しているようだ。おかげで濡れないで帰れた。

 ビニール傘は、いっそのことみんなの共有物にすればいい。適当な場所に置いて帰れば、別の人がまたそれを利用することができる。

 ビニール傘は置き忘れてもそれほど後悔はしないが、意外と高い目の傘を持ち歩いているときのほうが忘れやすい。

 お天気の話は、挨拶代わりによくするが、いざ街に出てみると、他のことに意識がとられてしまう。天候の影響を受けにくい地下街やビルの中を移動しているときは、傘はいらない。

 折り畳み式の傘を常に鞄の中に入れ、いつ降られてもかまわない備えをすればいいのだが、鞄は少しでも軽いほうがいい。だが、持ち歩いていたおかげで、降られたとき、駅前などで、さっと傘を開けるのは、気持ちがいい。「備えあれば憂いなし」は、未来を先読みする行為だが、「世間の天候」は読みにくい。


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