川崎エッセイ 吹田もののけ紀行 その1 妖怪マンダム HOME
「もののけ」とは、妙な気配のある場所を、ここでは指している。時代が如何に新しくなっても、太古から人間が感じてきた「ある種、妙な気配」は、形や姿を変えても、感じ続けるものだ。
さて、今回は桃山台にある公園を訪ねたときの話をしよう。公園は、どう転んでも公園で、それ以上のものは、実は何も見いだせない。しかし、現実は常に幻想を滲ませる。
桃山公園はヨーロッパの森を連想させるような美しい場所だ。散歩中のマダム達には気品さえ感じられる。しかし、公園内の池を見たとき、幻想の渦が僕を襲った。それは、彼女達は、ここで暮らしている妖怪ではないかという幻想だ。
その池は「魚釣り禁止」となっている。つまり、魚がいるのだ。食料を囲い込んだダムのようなものなのだ。近所の主婦が今夜のおかずに魚を釣るというような生やさしいものではなく、家さえも失ったマダム達が、ここに暮らしているのだ。僕はこの現象を「妖怪マンダム」と名付けた。
マンダム達は桃山台の邸宅に住んでいた。ところがこの不景気で、それを失い、流浪の旅に出たのだ。しかし、バブル時代の豊かな暮らしが忘れられず、思いが駈けて人影となって、舞い戻ってきたのである。
人を見たら妖怪と思え……である。