川崎エッセイ 吹田もののけ紀行 その5  妖怪石箱     HOME

 JR吹田駅のすぐ近くにある昭和町で、据え置きタイプのごみ箱が並んでいるのを発見する。各戸に一つずつ設置され、景観とも馴染んでいた。

「妖怪石箱」は、このゴミ箱に化けて、市中に現れ、ごみを捨てている人間を見つけると「捨てるなー」と声をかける。警告するだけではなく、ごみを食べてくれる。ちゃんとフォローもしてくれる善い妖怪なのだ。

 また、ゴミの種類を問わない。生ゴミから燃えないゴミや空き缶までなんでもオーケイなので、面倒な仕分けは必要ではない。食べたゴミは妖怪の国へ転送されるようだ。そんな捨て場所があれば、当局もゴミ処理に頭を悩ませないですむが、妖怪石箱の食欲にも限界があるようだ。

 最近この妖怪が減ったのは、使わなくなったゴミ箱として、ゴミ扱いにされ、解体されてしまうからだ。

 昔の町内には口うるさい人がいた。自分の子供でなくてもマナーが悪いと叱るおじさんとかだ。叱るのと怒るのとは違う。叱り方の下手な人だと怒っているように受け取ってしまう。妖怪石箱は「叱り」の達人で、この妖怪に注意されると素直に耳を傾けられるようだ。

 昭和町は綺麗な町だ。据え置き型のゴミ箱が睨みを利かしているためだろ。


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