川崎エッセイ 吹田もののけ紀行 その6 妖怪バトン HOME
JR吹田駅前に妖怪バトンが出現するらしい。外形はハトで、平和の象徴とされている鳥に化けた妖怪で、リストラで会社を追われた人々の念が集合されて妖怪と化したらしい。
JR吹田駅を降りると、まるで中庭のような公園とターミナルがあり、阪急と京阪のバス停がある。各乗り場は陸橋で結ばれており、鳥瞰できるため視認性がよい。
リストラを言い渡された会社員が、それを家族に伝えることを躊躇し、駅前でぼんやりしているとき、その念がハトに伝わり、妖怪バトンを発生させている。また、面接に行き、今日もまた再就職が決まらず、物思いに耽ることも、バトンの増殖に繋がる。
駅前にハトがいるのは驚きで、お年寄りが餌をまくと、一斉に彼らは集まってくる。その中に妖怪バトラもいるに違いない。 大阪の衛生都市的、またはベットタウンとしての街は、会社員の家が多い。通勤として利用されていた駅も、行く会社を失うと、駅前風景も違って見えるはずだ。
この駅舎を含め、「さんくす」と呼ばれているらしい。「ありがとう」を連想してしまう。 取材を終え、改札前の喫茶店に入る。もう退職したような年輩の人達が、コーヒーを飲みながら読書をしたり、喫茶を楽しんでいる。この人達からはバトラを生む念は出ていなかった。