川崎エッセイ 吹田もののけ紀行 その7  妖怪コロッ助     HOME

 泉町は古き良き時代の面影をそのまま残している住宅地だ。迷路のように路地が入り組み、鬼ごっこや探偵ごっこにはうってつけの町。しかし、今の子供はそんな遊びを路地でしなくなったようだ。

 その時代は昭和三十年前後だろうか。コロッケが五円の時代で、子供達は学校帰りや、遊んでいる最中に、揚げたてのコロッケを買い食いしていた。決して「あの店のコロッケは美味しい」とかではなく、コロッケそのものが美味しかった。まずいコロッケやたこ焼きなど、なかったように思える。

 さて、妖怪「コロッ助」はその時代で止まってしまったコロッケの化け物で、泉中央商店街近辺に棲息している。この街の豊かな町内環境が合っているためだろうか。

 この商店街は住宅地の中に突然泉のように出現する。町内密接型で、道路の上を被うアーケードもないので、町並みと一体化している。さりげなく商店街は始まり、枝分かれし、そしてさりげなく住宅地へと抜けてゆく。

 妖怪コロッ助は、コロッケと同寸で、商店街との境界あたりの深くて細い路地裏に潜んでいる。  コロッ助は子供が好きな妖怪で、路地裏で鬼ごっこや隠れん坊、そして縄跳びなどの遊びを見学するのを楽しみにしている。最近その種の遊びが廃れたためか、コロッ助の楽しみも減ったようだ。


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