川崎エッセイ 吹田もののけ紀行 その8  妖怪水虎     HOME

 余程、郊外でないと、子供たちが川遊びする光景はお目にかかれない。護岸工事でコンクリートで固められ、水害は少なくなり、川遊び禁止で水難事故も起こりにくくなったが、無邪気なことは出来なくなった。

 妖怪「水虎」は田園の小川に住む妖怪だが、河童のように、姿を見ることは出来ない。子供に取り憑いて、水遊びを仕掛ける妖怪なのだ。

 その日僕はバイクで散歩中、南正雀ふれあいランドの前を通りかかったとき、ただならぬ水音と、子供のはしゃぎ声で、エンジンを切った。

 そこは川沿いに出来た公園兼自然歩道で、1キロ強の長さがある。住宅と河川の間にあるオアシスだ。

 ひと昔前、阪急電車からの車窓風景は、田畑の広がる田園風景で、小川のせせらぎなど、珍しくも何でもない日常風景だった。それがいつの間にか、宅地になってしまい、もう水虎の活躍場所は、なくなったかのように思えたのだが、このふれあいランドで復活したようだ。

 妖怪が出現する条件のの中に、自然が豊かな場所、人の暮らしぶりが濃い場所とかだ。妖怪は、環境から生まれたデキモノのような存在でもある。

 正雀は、美しい地名だ。雀が田園地帯を飛び交う姿が浮かぶ。小川で悪さをしている水虎を見つけて囀っているような長閑さだ。


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