川崎エッセイ 吹田もののけ紀行 その9 妖怪コトリ HOME
市街地ではもう原っぱは見かけなくなった。原っぱは空き地のようなもので、利用されていない謎の空間である。昔の子供達は原っぱで隠れ家を作ったり、チャンバラごっこをしていたものだ。誰かの所有地なのだが、子供達は頓着なく入り込み、遊びの場にしていた。
JR岸辺駅に降り立つと、かなり規模の大きな原っぱを眺めることができる。JR所有地のため、その中で子供が遊んでいるわけではない。ある意味で原っぱが保存されているのだ。
「コトリ」は原っぱに棲息する妖怪で、子供をさらうとされている。子供を誘拐する物騒な妖怪なのだが「神隠し」と同じように、子供がいなくなると、この妖怪の仕業にされていた。実際には親が子供を脅すために発明された妖怪のようだ。
コトリは紙芝居のおじさんに化けて、さらった子供はサーカスに売られ、毎日酢を飲まされるとか、大きな網を持っていて、子供を網で掬い取る…等々、都市伝説の趣が強い。
JR岸部から吹田にかけて、車窓からこの原っぱは見ることができる。市街地に残された貴重なオアシスのように思える。
じっくり観察したい場合は岸部駅でホームに降りてみることだ。次の電車が来るまでの時間、コトリを探すのもよいかもしれない。