川崎エッセイ 吹田もののけ紀行 その10  妖怪足軽     HOME

 地下鉄御堂筋線が走る江坂は、大阪市内の雰囲気が濃厚だ。地下鉄は都会を流れる川のようなもので、その流域は都会化される。

 江坂にも以前は農耕的妖怪が棲息していたはずだが、今はその環境ではないため姿を消している。代わって現れたのが、自転車の妖怪「足軽」だ。

 この妖怪は駅前の歩道などに姿を現す。その姿は不法駐輪の自転車と似ている。時代と共に妖怪も今風となっている。「小豆洗い」などは、一目で妖怪だと分かってしまうが、妖怪足軽は普通の自転車と見分けることはできない。

 この妖怪は、持ち主が取りに来ないことで、放置されることから発生する。この種の自転車は、撤去されるのだが、いくら撤去してもまた姿を現す。

 江坂にこの妖怪が多く発生するのは、元々ここに住んでいた妖怪が、都会化の波に呑み込まれ、逃げ場を失い、取り残されたためだ。あまりにも急速に発展した街に多く見られる現象でもある。

 放置自転車妖怪「足軽」の正体は「吹田のっぺらぼう」ではないかと推測される。この妖怪は顔がなく、別名「恥知らず」とも呼ばれ、顔がないことから、誰であるかが特定されないため、厚顔で悪さをすると聞く。

 

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