川崎エッセイ 吹田もののけ紀行 その12  妖怪大学イモ     HOME

 妖怪大学イモは貧乏な学生妖怪である。この時代、いかにも貧乏そうな学生の姿は見かけなくなった。一見しただけでそれと分かる貧乏らしさが影を潜めている。
 吹田にある関大近くの町には学生相手の下宿屋など探すほうが難しいだろう。金銭的に余裕がなくても、ワンルームマンションに住んでいたりする。
 そういう時代ほど、昔を懐かしむように出現するのが妖怪大学イモなのだが、関大近くの大手町界隈を探したが、わずかに残る学生向けアパートが残っている程度だ。その一室に大学イモがいるような雰囲気はあったが、貧乏見学は失礼なので、踏み込むことをやめた。
 この妖怪が好んで着るような安い衣服類も、逆にファッション性がそこそこあり、貧乏臭さとは繋がらない。
 赤貧の苦学生は以前なら苦行僧にも似た聖なる貧しさを秘めていた。しかし近頃のキャンパスは下手な服装では行きづらくなっていると聞く。イモ学生など存在しなくなったのだ。
 妖怪大学イモはその孤塁を死守している。時代がどこへ飛ばされようと、人の本質はさほど変わるものではない。だがその本質を画一的なうわべで化け通そうとする今風な学生ほど、妖怪じみており、怖い。


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