川崎エッセイ 吹田もののけ紀行 その15  妖怪ものぐさ     HOME

 怠けたいとか、さぼりたいとかは社会人にとってはやってはいけないことだ。それだけに、この欲望は安全な場所で処理するのが賢明だ。
 しかし妖怪「ものぐさ」に取り憑かれた人間は、怠け者になるため、大事な仕事は任されないので、それなりに安全だ。
 怠け者で有名な「ものぐさ太郎」は、怠け者であることを宣言しているため、ある意味で、安全な存在だ。彼が怠けることを周囲が知っているからだ。
 さて、妖怪「ものぐさ」を探しに、関大へ続く賑やかな通りを探索した。
「ものぐさ太郎」は部屋の中で寝転がっているが、現代妖怪「ものぐさ」は、外に出て、本来の仕事をしないで、他のことでうつつを抜かしている。
 この妖怪は人に憑依するが、生産的なことをしないため、実に平和な妖怪だ。
 ゲームセンターやビデオ屋の前で、ぼんやり立ち、行き交う人を眺めている。お金を使って何かをするような気力は抜かれているため、経済的にも安全だ。
 この妖怪は怠け心を食べると、その人から抜け出る。
 しかし「ものぐさ」も取り憑けないような人間は潜在的に怠け心を温存し、やってはならないところで、怠けてしまう。
 怠けられない世の中になるほど「ものぐさ」は憑依しにくくなり、冗談では済まされない怠け事故を引き起こしかねない。


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