川崎エッセイ 吹田もののけ紀行 その16  妖怪ダンジョンボール     HOME

 大阪平野から見ると千里丘陵は、外野のスタンド席に当たる。山と言うほど高くは ないが地形がうねうねしており、高低差も多少はある。
「妖怪ダンジョンボール」は、丘陵の入り組んだ地形に住む「迷い里系妖怪」だ。昔 から千里丘陵に住み、入り込んだ里人を迷わすことを楽しみにしていた。
 そこに巨大な団地群が建造された。
 阪急千里線で山田駅を通過したあたりから建物のほとんどは団地ばかりとなる。終 点の北千里駅前は巨大なショッピングビルがあり、街の趣はある。
 駅からすぐそこにある団地群の一つに入り込むと、大阪市内にあるようなマンショ ン群が建ち並ぶ殺伐とした景観ではなく、自然の中にほどよく溶け込み、長い年月で 熟成された佇まいを見せている。各棟までの道も美化され、自然歩道のように手入れ が行き届いている。
 しかし、似たような棟が並んでいるため、妖怪ダンジョンボールの迷い里術にか かってしまう。
 この妖怪は風船の形に似ており、団地に入り込んだ部外者の前に浮かび上がり、方 向感覚を失わせる。
 そのため、意味なくうろうろしているように見られ、住民から怪しい闖入者と思わ れてしまう。
 本人は出口を求めて必死に歩いているのだが、術にかかかっているため、団地内か ら抜け出せない。
 部外者は千の目で見つめられているような錯覚に陥り、気絶することもあるらしい が、それは言い過ぎだろう。

 

 


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