小説 川崎サイト

 

モンスターハンター

川崎ゆきお



 モンスターハンターが依頼を受け、とある洋館へ入り込んだ。
 城のような洋館で、見るものにとっては監獄のようにも見える。庭はなく、森の中にいきなり立つ四角い塊りだ。
 得体の知れぬ洋館だが、依頼はモンスター退治で、洋館調査ではない。
「火の口からはい出てくる魔物を殲滅せよ」
 依頼主が渡したメモはそれだけだ。依頼主も意味が分からないらしいが、要するに魔物を退治すればいいのだ。
 だが、モンスターハンターは真っ先に洋館の周囲にいる魔物と戦うことになる。
 あっという間に退治した。
 魔物は犬のような奴だった。依頼にある魔物ではない。火の口らしきものがないためだ。
 次に困ったのは入り口の大玄関が閉まっていることだ。ここからは入れない。それで、洋館の周囲を三周し、崩れかかっている石組を壊し、中に入った。
 こういうことは依頼にはない。
 中は巨大なホールだった。それを囲むように廊下があり、部屋が並んでいる。
 三つ目の部屋を開けたとき、ここではないかとハンターは確信した。暖炉があり、煙突の一部が見えている。
「火の入り口」
 ハンターは焚き口に顔を突っ込み、上を見る。
 モンスターはいない。
「ここが異界との出入り口となり、モンスターが沸いて出るはずだが……」
 小一時間待ったが、出ない。
 部屋の扉がギーと開き、男が入ってくる。
 同業者のようだ。
「火の入り口とはここだと思うのだがなあ」
 男に言う。
「二つ先の部屋に(火の入り口)と書かれた部屋があるぜ」
「あ、そう。あ、そう」
 モンスターハンターは深読みしすぎたようだ。
「しかし、わかりにくい依頼だよね」
「火の口からはい出てくる魔物を殲滅せよ。だろ。最初から火の入り口の部屋の中にいる魔物と書けばいいんだよね」
「そうそう。思わせぶりな言いかただから、誤解するじゃない。ところで、君はどうしてここに? もう、この依頼は終わったんだろ」
「火の入り口の上へ上がり、異界へ出よ。という依頼さ」
「でも、この暖炉の煙突狭くて上がれないよ」
「そうなの」
「火の入り口の部屋に上へ行く階段とかなかった?」
「あ、見ていなかった。きっと、この暖炉のことだと思いこんで……」
「お互い苦労するねえ」
「ああ、モンスターは弱いのにね。探す方が大変さ」
「だから、モンスターハンターじゃないか」
「あ、そうだった」

   了


2009年8月1日

小説 川崎サイト