小説 川崎サイト

 

狡猾

川崎ゆきお



 モンスターの陣地がある。首領ウルバチを倒せば賞金が出る。さらに当局から称号が貰える。
 若武者はその前に立つ。
「おまえさんでは無理だ」
 後方から老武者が声をかける。
「なぜだ」
「さっき、おまえさんがモンスターを倒すのを拝見した」
「見ていたのか」
「苦戦していたようだな」
「二匹なら倒せるが三匹一緒だと辛い」
「首領ウルバチの周りには十匹ほど仲間がいる。おまえさんが倒した奴より少し強いのが二匹いる。ウルバチはさらに強い」
「そうか」
 若武者は不安になる。少し後ずさりした。
「無理することはない。もちっと強くなってから来ればいい」
「先を急ぐ、こんなところで、粘りたくない」
「一人では無理なことは分かるな」
「流石にそれは分かる」
「無謀な若者ではないようじゃな」
「馬鹿じゃない」
「どうだ、組むか」
「それしかないか」
「二人なら全滅させることができるぞ」
「しかし、十匹いる」
「任せろ」
 老武者は陣地の入り口で斧を振り回しながら奇声を上げる。すると、モンスターが数匹現れた。
 老武者は向きを変え、引いた。
 モンスター四匹が追いかけてきた。
「やれ」
 四匹相手なら二人で楽に倒せた。
「あと六匹だ」
 老武者は同じ手を使い、モンスターを釣り寄せようとした。
 奇声を上げ、斧で威嚇した。
 釣られてモンスターが陣地から出てきた。
 老武者は若武者と合流し、おびき寄せたモンスターを倒そうとしたが、残りの六匹全部が追いかけてきていた。首領のウルバチもいた。
 無理だ。と老武者は思い、逃げようとしたが若武者が挑みかかった。
 見殺しにはできなくなり、老武者も一緒に戦った。
 三匹は片づいたが、残るウルバチと、その側近のモンスター二匹が強かった。
 敵は彼らの能力を超えていた。
 老武者は首領ウルバチと向かい合った。
 若武者が残りに囲まれている間にウルバチを倒し、その首を取った。
 若武者は必死で逃げ去っていた。残りのモンスターが老武者に向かってきた。
 老武者は首を持ったまま必死に逃げた。
 老武者は賞金と名誉を勝ち取った。
 老武者は三十四回ウルバチに挑み、やっと目的を遂げたのだ。

   了



2009年8月28日

小説 川崎サイト