小説 川崎サイト

 

失敗体験談

川崎ゆきお



 失敗についてのイベントが開催された。何人かの失敗談を聞く催しだ。
 コンビニを営業し、見込んでいたほどには客が来なかったので、数ヶ月でやめた話は、特になんと言うことはないが、見込み違いという失敗だ。その後コンビニは閉めたが建物はまだ残っている。取り壊す費用もないためだ。そして、コンビニ店内跡を住居として使っているようだ。冷蔵庫だけはやたらと多い家だ。
 リストラにあいそうになり、社内で頑張らなかったため、よくできる社員が残り、自分は真っ先に切られた。このときの順位の高さは自慢できない。しかし、一年後、その会社も倒産し、結局頑張った人と頑張らなかった人の差がなくなった、という話。
 しかし頑張って社内に残った人は、倒産後もすぐに頑張って再就職したが、自分は、まだ何もしていないとか。
 そういう失敗体験者が十人ほど登場し、話し終えた。
 失敗談は珍しくない。成功談を語る人よりも圧倒的に多い。だが、失敗した場合、黙っている場合が多い。失敗自慢などする人はまずいないからだ。道場を交うことが目的なら別だが。
 いずれにしても成功するより失敗するほうが簡単だ。特に失敗する方法など考える必要はない。
 聞いている側は失敗から何かを学ぼうとしている人もいる。だが、他人のことは見えても自分のことは見えない。
 多くの失敗談を反面教師とするよりも、失敗してもかまわないのではないかという気になり、癒される人もいた。
 しかし失敗体験談イベントそのものが失敗で、入場者が少なく、赤字になった。
 しかし、主催者は、顔色一つ変わっていない。普通のことだと言わんばかりに。

   了

 


2009年9月16日

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