小説 川崎サイト

 

計画書

川崎ゆきお




 課長は計画書を見ている。高橋社員が書いたものだ。
「どれも成果を上げていないようだが」課長は係長にいう。
「計画書ですから」
「事業計画書だろ」
「はい」
「これを君は見たのかね」
「はい」
「で、どうした」
「見ただけです」
「じゃ、計画書を見ただけか」
「課長が計画書を書かせるようにおっしゃられたので」
「それで、書かせたわけだ」
「はい」
「君ねえ」
「はい」
「作文を書かせろと言ったんじゃない。どういうことをやるべきか、または、やりたいとか、または今、こういうことを考え中、というようなことだ」
「はい」
「で、高橋君に何か伝えたのかね」
「はい、読んだと」
「君がね」
「はい」
「実行するように命じないと、ただの作文だよ」
「あ、はい。でも、これは課長命令でないと」
「じゃ、君は計画書をとりまとめただけかね」
「遅くなりましたが、ようやく課長にお見せできるようになりました」
「半年前の話だ」
「はい」
「このアイデア、いいねえ」
 課長は高橋の計画書を係長に示す」
「そうですか」
「実行するように」
「ああ、高橋君、もう退社しました」
「早退かね。体でも悪いのかね」
「いえ、会社を辞めました」
「じゃ、他の部下が実行するように」
「えーと、何でした」
 係長は高橋が書いた計画書を読みだした。

   了

 



2010年2月27日

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