隠れ武器屋
川崎ゆきお
「武器屋?」
「わかりにくい場所にあるのですが、営業しいています。隠れ武器屋ではないかと思われます」
冒険者は町ガイドからその話を聞き、行ってみることにした。
この町の大通りにも武器屋はある。しかも二軒もある。それで用は足りるはずなのだが、武藤武器店の武器は彼には買えない。お金が足りないからではなく、上級者でないと扱えない。
中級者である彼は中村武器店で買っている。そしてこの店で最高の武器はすでに持っている。
だが、上級者向き武器を扱う力はまだない。そのため、その間の武器が欲しかった。
町ガイドが言う隠れ武器屋にそれがあるかもしれないと、彼は期待した。
大通りを抜けると、すぐに田園風景となる。町はとってつけたように田園の中にポツンとある。
もうこのあたりからモンスターが出る。彼にとり、雑魚キャラレベルのため、問題はない。
町ガイドが教えてくれた村へ辿りつく。そのはずれにある鍛冶屋が実は武器屋なのだ。
早い話、製造直売と言うことだ。
作業場の壁に刀や槍に弓、斧やハンマーがかかっている。
彼は刀が得意なので、中剣と大剣の間ぐらいなのを希望している。
「多いんだよね、そういうお客さん。店屋じゃ売ってないだろ」
「はい」
「多いと言っても、そのクラスの剣の需要が多いってわけじゃない。うちでしか売ってないから、うちに買いにくるだけでね。だから、うちでは一番よく売れる」
「それは繁盛していいですねえ」
「おいしいよ。直販だからね。それに買う方も安いはずだよ」
冒険者は価格を聞いた。
「えっ」
上級者の大剣よりも高い。
「それは……」
「嫌ならいいよ」
「直販のほうが高いと思いますが」
「だがね、これは市販されていないだよ。そこんとこを考えてもらわないとね」
冒険者は有り金はたいて中級と上級の間の剣を手に入れた。
後で知ったのだが、町ガイドと鍛冶屋はグルで、こういう商売をやっていたようだ。
了
2010年4月22日