小説 川崎サイト

 

夢判断

川崎ゆきお




 洞窟だが、半分人の手が加えられている。
 その証拠にほんのり明るい。暗闇ではないのだ。
 所々に明かりが灯っている。松明が燃えているのだが、誰が管理しているのだろうか。永遠に燃える松明かもしれない。なぜならこの世界には魔法が存在するからだ。
 吉岡は学校の廊下の倍ほどの幅のある通路を進んでいる。果たしてそれが通路なのか部屋なのかはわからない。だが、まっすぐ延びた空間なので、通路だろう。
 やがて、壁が複数現れた。枝分かれしているのだが、同じ方向に向かっている。つまり、通路の真ん中を壁で仕切っているのだ。そのため三本の通路ができたように見える。
 吉岡は真ん中の通路を行く。
 左右に同じように通路があるはずだが、こちらからは見えない。
 やがて、広い場所に出た。振り返ると通路は二本に減っていた。気になるが、後で調べればいい。
 さすがに広間の真ん中は暗い。松明は壁沿いにあるためだ。
 それで、吉岡は右側の壁を目指した。
 壁と松明しかない。
 そういう場所をずっと吉岡は歩いているのだ。
 通路なら、どこかにいき当たるはずだ。何かと何かを繋げているのが通路なのだ。
 だが、この洞窟は通路がメインのようで、通路しか見あたらない。
 たまに通路が広くなる。それを広間と呼んでいるのだが、そこは単に広いだけの通路で、何かがあるわけではない。
「どんなものでしょうか。この私の夢は。朝方見ました。汗びっしょりです。怖かったです。何もない洞窟で、化け物が出たわけではないのに……」
「過程が全て、ということでしょうね」
「ああ、通路は過程、道中ですから、そういう意味ですか」
「過程はあるが目的地、到着点がない。それが怖かったのではないでしょうか」
「はい、ありがとうございました」
 
   了


2010年10月1日

小説 川崎サイト