あるチーム
川崎ゆきお
五人でチームを組んで仕事をする会社がある。
その会社の精鋭部隊だ。
チーム結成後、数年になる。
「上田君はいらないのじゃないですかね」
課長が統括マネージャーに話す。
「うん、やはり上田君だろうね」
マネージャーの意見も同じだった。
五人の中で、何をしているのか、よくわからないのが上田で、あまり役立っていないのではないかと思われている。
実際、目立ったことはしていない。
ただ、チームの和を崩すような行為はない。
「影の実力者だと思っていたのだがね」
マネージャーが呟く。
課長も頷く。
「違っているのかもしれない。彼は役立っていないのだ。金魚の糞だ」
「統括、それは言い過ぎでは」
「他のメンバーからも聞いたのだがね、一緒に行動するだけで、特に有効な動きはない」
「一緒にいるだけだと……」
「そう。だから、五人必要はない。残りの四人でやっているのと同じなんだから」
「でも、彼が抜けると負担が」
「一度抜いて、やってみましょう」
「あ、はい」
その後、このチームの成績は落ちた。
「どういうことだろうねえ」
統括マネージャーがぼやく。
「間違っていたのかもしれませんよ」
「仕事、ほんんどとれないようになってる。成績がた落ちだ」
「やはり、上田君が抜けたのが原因かと」
上田はチームに戻された。
すると、成績は以前よりも上がった。
「どういうことだろうねえ」
マネージャーがぼやく。
「存在ではないかと」
リーダーが答える。
「存在?」
「ムードメーカーなんですよ」
「ほう」
「四人だとギスギスします。競いあいます。いくらチームでも。そんなとき上田君が、それを吸収していたのです。また、メンバーのストレスも彼が吸収していたともいえます」
「しかし、仕事はできないのでしょ。彼は」
「それが彼の仕事なんです」
「仕事ができないことが、仕事なのかね。それは通らないよ」
「でも、彼が加わると、成績が上がります。チームも非常にいい状態になります」
「つまり……」
「何ですか、統括?」
「座敷童子」
「あ、まさに」
了
2010年11月16日