小説 川崎サイト

 

友が来る日

川崎ゆきお



 土曜なので誰かが訪ねてくると岡村は考えていた。岸本か田中、どちらかだと。
 ところが夕方近くなっても訪問者はない。先週は田中、その前の週は田中と岸本二人そろって来ていた。
 日記を見ると先月は毎週土曜日、この二人のどちらかが来ている。ここ数ヶ月そんな調子なので、今日も来るだろうと岡村が考えるのは当然だろう。
 いや、来る確率が非常に高いという程度だ。なぜなら来なかった日もあったからだ。
 夕日も暗くなり、夜になろうとしている。
 彼ら二人は夜に来ることも多い。何かの用事で出かけ、その帰りに来るケースがある。
 そろそろ夕食時だ。まだ炊飯器にご飯が残っている。スーパーで買った白身魚のフライとマカロニサラダも残っている。
 しかし食べているときに来られると面倒だ。
 そして夜になる。時計を見ると七時だ。夏場ならまだ明るいが、春先はさすがにもう暗い。
 岡村は腹が減っていることを感じている。今食べようか、今食べようかと、ずっと思っているが、今来る、今来ると考えると支度ができない。
 それで、ポテトチップの袋を開ける。これは友人が来たとき用にとっておいたものだが、まだもう一袋ある。
 ポテトチップなら、食べている最中に来られても悪くはない。
 それをかじりながらぼんやりしている。昼過ぎからその状態だ。友人のために時間を開けているのだ。しかし、約束をしたわけではない。そうではないが、毎週来ているのだから、今週も来るはずなのだ。これは暗黙の約束のようなものだ。暗黙だけに口に出したわけではない。しっかりとした決めごとではない。
 岡村はパソコンに記録している日記から、来なかった日を探した。
 すると四ヶ月前にそれが見つかった。来た日を調べるのは簡単だが、来なかった日は名前の記載がないため、時間がかかった。
 四ヶ月前の、その前はどうだっただろうかと、さらに調べた。
 すると、そこからさらに二ヶ月前にあったことがわかる。決して毎週来ていないのだ。
 時計を見ると十時になっていた。
 岡村はもうあきらめ、白身魚のフライとマカロニサラダをおかずに、ご飯を食べることにした。
 そして、食べている最中にチャイムが鳴った。
 岡村はさっとドアを開けた。
 そこに立っていたのは岸本でも田中でもなかった。
 
   了

 


2011年5月15日

小説 川崎サイト