小説 川崎サイト

 

銀河鉄道

川崎ゆきお


 丘の上で年取った青年が夜空を見ている。雲が多く、星は見えない。街灯りのほうがよく目立つ。
「銀河鉄道ですねえ」
 横にいた老人に聞こえるように言う。
「昔、銀河という夜行列車に乗ったことがある」老人が反応した。
「それは鉄道でしょ」
「銀河鉄道も鉄道じゃないのかね」
「鉄の道です」青年は言い切る。
「それは鉄板を敷いた道かね」
「列車は鉄です。それが通る道です。レールがなくてもいいのです。宇宙を走る道です」
「昔、銀河に乗ったとき、夜空が綺麗だった。体を沈めて窓の外を見ているとね、その角度だと空が見える。星があった。私の銀河とは、これだよ」
「その夜空に列車が走っているとすれば、どうですか」
「それや、走るのではなく、飛ぶだろ。列車は飛ばない」
「でも速いと飛ぶように走りますよ」
「そうだね」
「銀河鉄道を、今見ています」
「どこだ」
「探している最中です」
「夜空に列車の車両が浮いておるのかね。そりゃパニックになるぞ。列車なので、円盤ではない。だが、四角い箱型のUFOかもしれん。まあ、あり得んがな」
「銀河鉄道は宇宙の彼方まで行く長距離列車なのです」
「じゃ、宇宙船だ」
「そうです」
「まだ宇宙旅行の時代ではなかろう」
「僕らの未来人が、もう行っているはずです」
「まあ、いいが、そろそろ寒くなってきたので、帰るわい」
 老人は丘を降りた。
 年取った青年は銀貨鉄道を探し続けている。
 
   了

 


2012年4月25日

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