小説 川崎サイト

 

大福効果

川崎ゆきお


 高浜は夕食を食べた後、眠くなる。そして、何もできなくなる。そのまま横になれば、寝てしまえるほどだが、そうすると夜が眠れなくなる。だから、ここは我慢が必要で、そのため、気合いを入れるため、散歩に出る。
 不眠症で、街をさまようのではなく、眠気さましでさまようのだ。当然車の運転はできない。そのため、自転車で、とろとろ走る。
 さすがに道路に出ると緊張するのか、眠気は収まる。歩道を走っていても、前方をゆく人と接触しないように気を使うし、すれ違う自転車とも遭遇するので、うまく交わさないといけない。
 それで、戻るときは目が覚めている。
 そして、リビングでテレビを見ていると、急に眠くなる。それは散歩に出る前よりも眠気は深刻で、ソファーから動けないほど体が重くなり、そこに沈み込むことになる。これが非常に気持ちがいい。
 そして、目が覚めると、もう夜中だ。本来なら寝る時間だが、今起きたばかりなのだ。
 仕事は朝からある。そのため、寝ておかないと翌日体が持たない。
 しかし、すぐに眠れるものではない。それで、また散歩に出る。今度は不眠症のようなものだ。寝ないといけないのに、眠れないから。
 だが、本当の不眠症ではなく、昼寝の後、すぐに眠れないだけのことなのだ。
 それで高浜は深夜の散歩中、コンビニで弁当を買う。さらにパンや牛乳も。また大福やおはぎを買うこともある。
 要するに、大量に食べ、眠気をを誘う作戦なのだ。
 夕食後、眠くなるのと同じ理屈だ。
 しかし、夕食と、この夜食が違うのは、睡眠時間の間隔だ。夕食後の眠気は、朝から起きていたため起こることで、長い時間眠っていないためだ。
 それでも、大食すると、ぐっと眠くなる。特に大福が効く。それでやっと朝方近く寝入ることになる。
 そのため、わずかな時間しか眠っていない状態で、仕事に出る。
 そして、戻ってきて夕食を食べると、眠くなる。
 そのまま朝まで眠れば、理想的なのだが、そうはいかないのだ。夕食後の昼寝のようなものは長時間睡眠にならない。
 だが、この悪循環も、長く続けていると、それが日常化し、一に二回寝るパターンが完成する。
 慣れというのは恐ろしい。このパターンでないと、二十四時間一日分を過ごした気になれない。
 ただ、体重は増える。
 だめ押しの大福が効いているようだ。
 
   了


2012年4月27日

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