小説 川崎サイト

魔法使いと剣士

川崎ゆきお


 魔法使いと剣士が土手に座り込んで話している。二人とも旅の途中だ。
「飽きてくる」
 魔法使いが言う。
「僕もだ」
 剣士が言う。
 魔法使いは杖を持ち、魔法攻撃をする。剣士は剣で攻撃する。このパターンをずっと繰り返している。それに飽きてきたのだ。
「武器を交換するかい」
 剣士の発案で、魔法使いは剣を、剣士は杖を使うことにした。
 そして、別れた。
 剣士は杖を武器として、戦った。剣よりも長いが、木の棒なので、傷みやすい。すぐに駄目になりそうなので、魔法使いの真似をした。
 モンスターと遭遇したとき、杖を構えたまま、何かを念じる真似をした。呪文だ。
 モンスターは剣士が棒を持っているだけなので、いつものように攻撃してきた。剣士は呪文を使えない。そのため、魔法は発動しない。それで、仕方なく杖でモンスターを叩いた。しかし、ダメージをさほど与えることが出来ないため、何度も叩かなければ、倒せなかった。
 魔法使いもモンスターと遭遇した。いつもは遠くから魔法攻撃をしていたのだが、杖がないと魔法は発動できない。呪文だけででは駄目なのだ。
 すぐにモンスターは接近し、魔法使いに襲いかかった。
 魔法使いは剣で応戦したが、うまく剣を使い切れないので、苦戦した。幸い、そのモンスターが弱かったので、何とかなったが。
 それから、月日が流れた。
 二人は再会した。
「よく生きていたねえ」
 剣士はボロボロになった杖を、魔法使いに返した。
 魔法使いも刃こぼれのした剣を返した。
 二人とも、慣れない武器では力を発揮できないことを知ったことになるが、それでもその間、特に困ったことはない。
 剣士は少しだけ呪文を覚えた。魔法使いも少しだけ剣術を覚えた。
 そして、剣士は剣を持っていても、剣に呪文をかぶせる魔法剣士になっていった。
 魔法使いは魔法を使わなくても杖だけでも戦えるようになった。
 どちらも大したレベルではないものの、専門ではないスキルも使えることで、それなりの満足感を得たようだ。
 二人とも、それで、強くなったわけではない。
 
   了


2012年10月23日

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