小説 川崎サイト

 

雨の降る日は

川崎ゆきお


「雨の降る日は天気が悪い」
「はい」
「これをどう解釈するか」
「そのままだと思いますが」
「悪いのは天か?」
「雨だと思いますが」
「では、天は悪くはないのだな」
「晴れている日は天が悪いとは言いません」
「では晴れは善で、雨は悪か」
「雨が降らないと水不足になり、一概には悪だとは言えません」
「では、雨が降る日は天気が悪いとは思わぬ人もおると言うことだな」
「降り続けても困ると思います」
「では晴天続きも似たようなものか」
「はい、ほどほどに雨が降り、ほどほどに晴れていれば、いいんじゃないでしょうか」
「天気の良し悪しと人の営みが繋がっておるのじゃな」
「俄雨で濡れると面倒です」
「では、晴れている日を標準と見なすのかな」
「曇っていてもいいです。雨よりも」
「雲が去るとどういう」
「雲がない日ですか」
「そうじゃ」
「一点の曇りもない、いい天気、つまり快晴です」
「それはよいことか」
「気持ちいいです」
「では、全体としては晴れはよきものと言うことか」
「そうだと思います」
「では天気が悪いとは、天が悪いのではなく、気が悪いと言うことかな」
「はい、お天道さんは良くも悪くもないと思います」
「天を恨むとはどういう意味かな」
「運が悪かったということじゃないでしょうか」
「では、恨んでおるのは天ではなく、運か」
「はい、巡り合わせです」
「では、天とは何か」
「自然じゃないでしょうか」
「自然?」
「大自然です」
「うむ」
「今日は、これでよろしいでしょうか」
「ああ、参考になった」
 
   了


2013年1月23日

小説 川崎サイト