小説 川崎サイト

 

夢見る頃

川崎ゆきお


「最近夢は見ますかな」
「眠った後は新幹線です」
「それは結構。私なんて各駅停車で三駅か四駅に止まるます」
「近いのですか」
「はい。そのたびに夢を見ていたのか、それを思い出しながら、トイレへ行きます。都合三本立て、四本立てでしょうかな。ああ、昔の映画館は三本立て四本立てがよくあったのですよ」
「なるほど」
「昔の夢を見ます。最近のストーリーはあまりありません。これは昔の映画を見ているようで、懐かしいです。時には涙ぐむこともあります」
「はい」
「遠く離れた思い出などが、急に沸き出す感じでしてね、何が来るのかは分からない。玉手箱、びっくり箱のようなものです。まあ、毎晩それを楽しんでいますがね」
「夢って、過去ですよね」
「そうです。未来に向けての夢じゃない」
「でも将来の夢って、結構過去から来ていますよ」
「ほう、それはどういうことですかな」
「子供の頃、なりたかったことなんかを大人になってからやろうと考えたりします。これって過去の夢を果たそうとしているわけですから。種は子供の頃にあるんじゃないかと」
「ああ、そうなんだ。しかし、私は見ているだけで、特に何もしていませんよ」
「そうですねえ。夢は実現させたいですから。普通は。つまり、現実のものにしたいのだと思います」
「私が見た最近の夢は、子供の頃の夢もありますが、大人になってからの夢も多いですよ。もう忘れているようなことが夢の中に出てきて、ああ、そんな時代もあったんだと、しみじみすることもあります」
「それはいいですねえ」
「いやいや、たまに怖い夢も見ますよ。行いが悪かったのでしょう。今頃夢で復讐されますよ」
「夢は昼間あったことを復習すると聞きますが」
「ああ、そっちの復習ですか。まあ、昼間はのんびりと過ごしているので、復習する種などありませんよ」
「なるほど」
「しかし、やってもいない犯罪の夢も見ます。これは冤罪ですよ。何でしょうねえ。そういう夢は」
「昔の人は、夢は欲望の現れといってます。現実ではかなわなかったことを夢で果たすと」
「じゃ、私は奴を殺したいと思ったのでしょうねえ」
「物騒ですねえ」
「まあ、長く生きていると、恨みに思う人もいますよ。しかし、殺してやろうとまでは思いませんでしたがね。でも、本当にそうかと思うと、ちょいと違う。奴がいなくなればどんなにいいかと……」
「そういう犯罪の夢もよく見られるのですか」
「二十本に一つほど、そういうのが含まれていますかねえ」
「それは多いのでしょうか。少ないのでしょうか」
「さあ、少ないでしょうなあ。たまにしか見ませんから。でも、それを見てすっきりしたってことはないですよ。ただただ不安で、怖い夢です。してやったりの夢じゃありません」
「そうですか」
「夜中トイレへ行く体調が治れば、まあ、そんなに多くの夢は見ないと思いますよ」
「ああ、なるほど」
 
   了


2013年1月30日

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