小説 川崎サイト

 

誤反応

川崎ゆきお


 世の中はどう動くか分からない。
 竹田の場合の世の中とは、自分と関係する世界だろう。世間一般ではかなり遠い。もう少し直接影響のある身近な界隈だろうか。決してそれは町内のことではないが。
 相手の反応を見ながら行動する。これは普通だ。周辺に気を配りながら、判断するわけだ。この気配りは親切心ではない。極端に言えば、敵か味方かとなるが、敵が味方に、味方が敵にオセロのように変わることもある。
 また遠い世間での出来事が、何らかの形で影響してくることもある。
 要するに、何かよく分からない。
 簡単に見過ごしていたことが、後で影響を受けることもある。その因果関係の線図がよく見えないためだ。
 竹田が最近感じているのは、誤反応だ。誤変換のようなものだ。相手の反応を正しく変換できないことがある。竹田は手応えを感じているのだが、相手はそんなものを与えていなかったりする。
 これは、竹田の先読み変換が原因だろう。良いように解釈するとか、逆に悪い風に解釈しすぎなのだ。つまり、受け皿としての竹田にも問題があるのだが、それは感情を持った生き物なら、当然だろう。ここは間違っていても、喜怒哀楽を楽しむほうがよい。
 間違いから駒が出ることがある。ヒョウタンから駒だ。勘違いから思わぬ展開となり、良い方向へ行くこともある。このあたりは、よく分からない。
 軸がぶれないというのは、好ましいように思えるが、そう言われている人も内心はブレブレなのではないだろうか。その方が人間らしい。また、ぶれてくれなければ、話しがいもない。最初から答えを出されているのだから、話すだけ無駄になる。
 我慢して、軸をぶらさないようにしているだけかもしれない。そういう場合は、あと一揺らしだ。
 人はそれなりに柔軟だ。しかしグニャグニャになると、信用に関わる。だから、ある程度の軸は必要だ。それだけのことかもしれない。
 さて、それで竹田は何を考えていたのかを忘れてしまった。相手の反応を誤って受け止めることや、周辺で起こっていることに対し因果関係を創作してしまうことだろうか。
 よく考えると、みんなそうなのかもしれない。
 みんなフラフラしていると思うと、少し気が楽になる。
 
   了



2013年5月5日

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