小説 川崎サイト

 

幽霊

川崎ゆきお


 幽霊のことばかり考えたり、思ったりと、意識しているときは幽霊がよく出る。
 幽霊のことなど気にしないときは幽霊は出ない。別のことで意識が占領されているので、幽霊の出る暇がないためだろうか。そのため日頃忙しく立ち回っている人は、あまり幽霊を見ない。幽霊など見ている暇はない。それに尽きる。
 本当に幽霊がいるのなら、所構わず出るはずだ。ただ、幽霊との関係も考慮しないといけない。恨まれている場合は、つきまとわれるかもしれない。この考慮は幽霊の目的や事情による。
 目撃者とは関係なく、場所に出る幽霊もあるが、決まって幽霊が出そうな雰囲気のする場所が多い。出ても不思議ではないような場所だ。墓場などがそうだろう。当然何らかの事情で廃屋になったような古い建物なども。
 当然それらは時代とともに少なくなり、幽霊目撃頻度も減る。幽霊の事情なのか、それを目撃する人の事情なのか、よく分からない。おそらく後者だろう。目撃者の事情は聞けるが、幽霊の事情は聞き取りにくい。喋らないかもしれないし。
 神経がなす幻覚、とされて久しいが、神経や感覚、感情などがないと普通の生活は出来ない。
 しかし、世の中には不思議なことがある。神経のなせる仕業としてすませられればいいのだが、どうしても分からない出来事もある。これも神経のなせることとして処理していいのだろうが、それでもまだ納得のいかない現象がある。
 ただ、それらを妖しい現象と結びつけて考えると、そうなるだけなのかもしれない。気にしなければ、何も起こっていないのと同等になる。
 幽霊を意識するのは、意識するだけのものがその人にあるのだろう。だから、これは幽霊に限ったことではない。
 最近では、幽霊が出そうでない場所に出る幽霊がいそうだ。そして、幽霊が見えてしまうような意識になる状態も結構あるのではないかと思える。
 ただ、その幽霊は、あの幽霊ではなく、別のものかもしれない。
 
   了
 
  

  


2013年7月4日

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