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長い夢
川崎ゆきお
長い夢を見ていた。
作田は起きたとき、その内容がすーと消えていったので、細かいことは覚えていない。非常に短い時間に非常に長い夢を見ることもある。
その夢は過去の断片を集めたオムニバス映画のようなものだった。それは覚えている。
きっと一つ一つのエピソードは、それなりに濃い出来事だったに違いない。すべて作田が体験したことだろう。だから、起きたとき、手がかりはあった。あれはあのことが夢になったのだろうと。
夢として見ると簡単なのだが、実体験ではもっと長い。そこに出てくる人物や場所などは、どれもこれも作田が歩んできた道のようなもので、その一歩一歩は決して短くはない。
「しかし、忘れてしまうとは何事だ」
起きた瞬間は覚えていたのだが、すぐに夢の記憶を手繰れなくなっていることに、多少苛立った。見せるだけ見せておきながら、すーと消えていったようなものだ。ただ、エピソードが多いので、覚えられるものではなかったのだが。
作田は見た夢を半日ほどは覚えていることもある。場合によっては今もまだ覚えている夢もある。ただ、よく覚えている夢は、過去のどのシーンなのかが分からない夢だ。夢の中で初めて見たような印象の夢で、これは現実に起こった体験に近い。
現実で得たものではなく、夢の中で得たものだ。ただ、それをよく観察すると、現実にあったことの組み合わせなのかもしれない。
これは観察しようにも、夢の記憶だけに、どんどん薄れていく。現実の出来事は、手がかりさえあれば、何となく思い出せる。ここが違う。
すると、すっかり忘れてしまったことが、夢として出てきた場合、体験していないことが出たと思うのだろうか。実際には現実にあった出来事なのに。
さて、作田が見た長い夢は何だったのか。一言で言えば「いろいろなことがあった」で終わる。それだけの意味かもしれない。その一つ一つはそれほど重要なことではなかったように思う。ゴミのような記憶だ。
そこから何かを引き出すよりも、その夢を忘れてしまい、引き出せないことが注目ポイントになっていた。
そして、昼頃には、作田はもうすっかりその長い夢を思い出そうとしていたことさえも忘れていた。次に思い出すとすれば、似たような夢を見たときだろう。
了
2013年8月27日