小説 川崎サイト

 

魔除け

川崎ゆきお


 日常の中でふっと差し込む間(ま)。間は何処にでもあるのだが、それは日常の中ではいつもの間合いだ。そのため慣れており、その動きは自動化されている。いちいち考えなくても、自転車に乗るように乗っているのだろう。
 ただ、たまにふっと間が空いたり、妙な間が出て来たりする。いつもはオート操作だが、ここではマニュアル操作に切り替えないといけない。ただ、強引にオートのまま突っ込むこともある。そんな間合いなどなかったかのように、その間を飛び越えるのだ。
 その間は日常の中にある落とし穴のような場合、何となく前方が怪しいと感じ、うまく回避することもある。その落とし穴、トラップのようなものに引っかかっても、被害が少なければいいのだろう。これは不幸中の幸いと言える。
 日常、普段の暮らしというのは、いつもの繰り返しなので安定しているように見えるが、一歩踏み外すと大変なことになる。安全を見込んで行動すると、非常に細いレールの上を歩むことになる。少しはみ出すと落ちる。そのため、普通の日常行為というのは、思っている以上にシビアに運転していることになる。
 ただ、それらはいつでも踏み外せる。そうしないのは、どちらが得なのかを考えているためだろう。
 微妙な間合いとは信号が黄色に変わるような瞬間だろうか。急げば間に合う。つまり、うまく間が合う。だが、間が合わなかった場合、それこそ間に合わなくなり、事故に繋がり、下手をすると日常が吹っ飛ぶ。そういうのは日常の中ではいくらでもある。
 間を魔に置き換えると、魔の瞬間や、魔の時間帯など、いろいろ出て来る。魔が差すなどもそうだろう。
 この場合の魔は、向こうから来る魔と、こちらから開けてしまう魔がある。
 日常の中には危ない隙間がいくらでもある。昔の人は、そこから魔が入り込まないように魔除けを使ったのだろう。
 今はそういう時代ではないが、何らかの形で魔除けをやっているのかもしれない。
 
   了

 


2013年9月23日

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