小説 川崎サイト

 

睡魔

川崎ゆきお



 盛岡は急に眠気がした。パソコンに向かい、仕事をしていたのだが、我慢出来なくなった。まだ夕方前だ。こんな時間に眠くなるのはおかしい。昼御飯を食べた後なら分かるのだが。
 自宅で仕事をしている盛岡は隣の部屋のベッドに転がった。これはお告げがあるのかもしれないと、冗談で思ったからだ。あくまでも冗談だが、どうしてそんなことを思ったのかは分からない。
 きっと仕事を放り出して、横になったため、その言い訳だろう。これは聖なるものの導きだと。
 そのお告げとは眠くなったことではない。これは単に、眠いと体か頭が告げているだけのことだ。そうではなく、眠ると夢を見るのではないかと期待したのだ。
 その夢の中でお告げがある。では、聞こうではないかと横になった。
 それよりも、なぜこの時間、眠くなったのかを先に考えた。体調は特に悪くはない。多少疲労気味だが、会社へ行っての仕事ではないため、いつでも好きなときに休憩出来る。だから、結構休憩時間は長いし、また頻繁だ。途中で散歩に出たりもする。
 昼に食べたものを思い出した。めし屋で焼き魚と冷や奴を食べた。味噌汁も飲んだ。これが原因ではないはずだ。
 睡眠時間を思い出すと、確かに昨夜夜更かしをした。そして起きた時間は同じだ。少し睡眠時間が短かったかもしれない。では、それが原因だろうが、そういうことは度々ある。その度に昼間眠くなることは希だ。昼過ぎなら分かるが、夕食前のまだ早い時間に、これだけ眠くなる理由が他に考えにくい。だから、聖なるお知らせのためだろうと、解釈した。
 そう考えていたのは僅かな時間で、呼吸が深くなり、そのうち気持ちよくなり、眠ってしまった。
 起きると、三十分も経過していなかった。頭は冴えている。もう眠くはない。
 それで、肝心の夢だが、何も見ていない。
 夢のお告げはなかった。
 盛岡はその後、夕食まで仕事を続けた。
 翌日はそんなことはなかった。
 
   了


 


2014年5月3日

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