小説 川崎サイト

 

てんてこまい

川崎ゆきお



 安田は軽く流して、今日の仕事は終えようと考えていた。つまり、今日はあまり仕事をしないでおこうと。
 朝から体調が悪かったのも原因だが、それ以上に、最近熱意が下がっている。やる気がしないのだ。
 しかし、ここは地味に歩を進めていた方が後々のためになることを知っているだけに、単純にはさぼれない。
 自分がさぼった分、他の人がやってくれるのならいいが、仕事を溜めるだけになる。すると、ますます苦しくなる。
「本来なら休んでもいいのだ」
 安田はそれも考えた。一日休んだ程度では問題はない。だから、安田としては、積極的に仕事をしていることになる。
「軽く流す」
 しかし、そういうときほど、面倒なシーンに遭遇し、てんてこまいになることがある。そんな舞を踊りたくはないが、悪い偶然が重なることがあるのだ。
「来たなあ」
 安田はてんてこまいを予感した。これは、すぐに始まるだろうと。
 体調が悪く、やる気もないときに、忙しい目に遭うのは大変だ。小さな変化ではないのだ。そのため、大きな判断をしないといけない。それにはある程度のテンションが必要だ。
 だが、軽く流そうと構えていたので、気合いが湧き出ない。これを無理に奮い起こせば、体に悪いし、頭が痛くなる。そしてその後遺症が残るだろう。
 安田は濃いブラックコーヒーを飲んだ。しかし、逆効果で、気分が悪くなった。
 こういうときは饅頭を食べると治るので、大福餅を食べた。
 これが直ぐに胃に来た。そして眠気も。
「来たなあ」
 調子のいいときでも、結構しんどい処理を、安田は続けた。
 重なるときは重なるもので、別の用事が急に入ってきた。
 安田は夜半までてんてこまいを踊り続けた。
 やはり、一日休んでいた方がよかったと後悔したが、仕事は捗ったようだ。
 大した仕事をしたわけではないが、多少充実した。
 しかし、その後三日ほど完全に休んだ。
 
   了
 



2014年6月14日

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