小説 川崎サイト

 

偉そうな人

川崎ゆきお



 世の中には一言も二言も多い人がいる。そして態度が大きく、偉そうにしている。しかし、その実質は大したことはなかったりする。ただ、この態度だけで押し出しがあるため、何かがあったとき優先的にサービスを受けられたりする。うるさいやつを先に黙らせる必要があるためだろうか。
 大股で肩で風を切り、足はがに股気味で、両手を必要以上に振り、さらに外に向かっている。これはそれなりに力がいるだろ。自然に振っている腕ではないためだ。当然足も。もうこういう人が向こうから来れば、避けるしかない。そんな歩き方の人が道を譲るはずはない。
「偉そうな人はですねえ。あれで防御しているのですよ。本当は弱い人なのですよ」と解釈する人もいれば、
「自己主張が強すぎるのです。ということは主張が逆にないのかもしれませんよ。見掛けだけで中身はなかったりしますねえ」とか、
「あれは猪武者でしょ。一騎駆けで、大局には影響しません。手柄を立てますが、侍首程度。道を譲らないのは横への動きがしんどいためでしょ」など。
 また、ある人は「あれは動物です。あの歩き方は猿です。ゴリラです。人より知恵が低い。電車で大股を広げて座るような奴では、リーダーは無理でしょ。威嚇だけじゃね」と、いろいろ言われてしまう。
 大木は名前も大きい。そして態度も大きい。体も大きい。そのため、歩き方も迫力がある。当然ゴリラ歩きになるのは、その方が楽なためだ。体重もあるので、重いのだ。腹に米俵を乗せているようなものなので、少し後ろにそる感じになり、体の揺れを吸収するため、がに股になる。また必要以上に腕を振った方が安定するし、前へ進みやすい。がに股になるのは、股ずれするためでもある。内股が擦れやすい。だから決して威嚇ではないし、偉そうに歩いているわけではない。
 また、声が低くてでかい。これが高い声なら愛嬌があるのだが。
 夏の暑いときでなくても汗をかく、特に足の付け根から股の裏側にかけて汗疹が出来る。非常に痒いので、かくと痛くなる。だから、それがきついので、足を広げて座ることが多い。また、体系的に脚を並行に並べて座るにはかなり力がいる。座っていても決して楽な姿勢ではないのだ。
 また、大木は声高になってしまうのは、短気なためで、本意ではない。これは体型に関係ない。声高な人もいくらでもいる。決して偉そうに主張しているわけではないが、我慢が出来ないのだ。それに何人かと一緒のときは、どうしても矢面に立たされる。押し出しがあるように見られるためだ。実際、そのドスのきいた声で交渉すれば、すんなりと進む場合がある。ただある範囲内での話だ。
 大木は自分と似たような体型の人を、意識的に見てきたが、大人しい人が多い。それなのに、世間の評価とは違うのだ。
 大木は世間で言われているところの鬼瓦のような厳つい顔だ。そんな顔で、あまり可愛い態度に出ると、逆に誤解される。それに似合わない。人は年を重ねると人格が顔に出るというのは嘘だ。
 人は見掛けが大事だが、何ともならないこともある。本人は気にしなくなっても、他の人が気にする。それも含めて人並みの内なのだから、もっときつい人から見れば大したことはないのだろう。
 
   了


 


2014年8月20日

小説 川崎サイト