小説 川崎サイト

 

海底軍艦

川崎ゆきお


「寒いと固まってしまいますなあ」
「フリーズです」
「氷のように固められる?」
「瞬間冷凍、一瞬です」
「冷凍砲のような」
「砲?」
「はい」
「そんな大砲があるのですかな」
「海底軍艦が搭載しています」
「潜水艦ですか」
「空も飛びます。地中にも入り込めます」
「どうやって」
「鋸のようなものが先についているのです。ドリルのような」
「空想科学小説ですなあ」
「そうです」
「そんな与太話じゃなく、本当に体が固まるんじゃないけど、縮小しますなあ。体積が縮むわけじゃないですよ。いろいろと行動が萎縮的になる。気持ちも小さくなる。開放的ではなく閉鎖的に。しかし、この季節、それがいい。外じゃなく、たまには内を見つめるいい機会ですよ」
「ありますねえ。国盗りゲームでも、内政に勤め、国を豊かにする時期が」
「ゲームで内政ですか。何をするのですかな」
「新田を開墾したり、鉱山を探したり、あとはまあ、商売ですなあ。特産品を売りに行くとかね。他国では領地争いに明け暮れていますが、それに巻き込まれないように、内政に勤め、実力を蓄えるわけです。田圃が多くなれば、養える兵が増えるのです。商業に力を入れると、倉にお金も貯まる。それで軍備も整えられる」
「結局それで、戦に行くわけですな」
「いや、行く必要はないです。強い国になれば、攻めてきません」
「ほう」
「ところが落とし穴がありましてね、それで何十とある国が、徐々に減っていく。天下統一が進んでいるのです。それで、殆どがある大大名の国になる」
「じゃ、その大大名の国に従属すればいいじゃないですか」
「そうなんですが、それでは天下統一を捨てることになります。このゲームの目的ですからね」
「じゃ、内政ばかりだと、負けるじゃないですか」
「まあ、そうなんですが、簡単には負けません。大大名の天下統一をかなり遅らせます。言い忘れましたが、内政の他に外交もやってます。従属した大名に謀反をそそのかせたりします」
「ほう、素直に大大名に従えば、安泰なんでしょ。領地も安泰なのでは」
「それでは、ゲームとして負けになる。一大名として終わるわけですからね」
「じゃ、どうするのかね」
「はい、一応抵抗するだけして、小競り合いで勝ちます。何せ、こちらは一枚岩で強いのです。敵軍は寄せ集めですからね。それで、和議に持って行く。これで、その大大名の配下にはなりますが、実力者として、迎えられます。当然他のどの大名よりも領地は広い。兵力も多い」
「いやな存在ですなあ」
「そして、時期を待つのです。その大大名が没するのを」
「長いゲームですねえ」
「そうです。内政もいいのですが、力を蓄えすぎると、簡単には降参しない。これがいけないのでしょうなあ」
「まあ、私が冬場固まってしまうだけで、内政もする気力がないので、そんな力も蓄えられませんよ」
「はい、その方がすっきりしていていいです」
 
   了
 

 

 


2014年12月22日

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