いつも同じ方法で勝てるとは限らない。だがその方法でしか戦えない人間もいる。牧田はそのタイプだった。
「ワンパターンなんですよ先輩は」
「分かってる」
「敵も慣れてきて、パターンを覚えますよ」
「分かってる」
「どうするんですか? そんなとき」
「そのままいく」
「敵も進化してきますからねえ、やられちゃいますよ」
「やられたふりをすればいい」
「やられちゃ、それで終わりじゃないですか」
「それで相手は学習する。私は戦法を変えないと」
「でも、それは再戦があっての話でしょ」
「再戦はよくある」
「で、再戦のときに戦法を変えるのですね」
「変えない」
「じゃ、また負けるじゃないですか」
「それが不思議と負けないんだな」
「読まれているんですよ。先輩の戦法が」
「相手は深読みする」
「深読み」
「敵が賢いほど深読みする」
「それで?」
「まさか私が同じ手で挑んでくるとは考えない。当然でしょ。前の手で負けたのだから、手を変えてくると思うのは」
「まあ、そうですが」
「それで敵は余計な配慮をし過ぎ、負ける」
「本当ですか」
「だから、一度負ければ後は連勝だ」
「でも負けることもあるのでしょ」
「ある。だからこの戦績だ。ほどほどのランクだ。だから強いとは思われない。それで油断させることも出来る」
「先輩のやり方で行くと平凡な戦士ということですか」
「どうせ、そうなんだから、それで満足だ」
「一番強い戦士になりたくありませんか? 地位と名誉、それに大金も入ってきますよ」
「コストがかかる。それは辛い道だよ」
「先輩のように年を重ねると、そのあたりが落としどころになるんですね」
「誰もが英雄になりたがっているわけではないさ。コストがかかり過ぎる割りには、大したことはないよ」
「僕はまだ若いから目指しますよ。先輩の戦法も面白いから参考にしてみます」
「馬鹿相手には通じないから気をつけるんだ」
「でも、先輩のような生き方も悪くないですよ。先輩には型があります。それって羨ましいです」
「少しは褒めてもらって嬉しいよ」
「はい」
了
2007年1月23日
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