小説 川崎サイト

 

神々の衣服

川崎ゆきお


「高天原でスサノウが暴れて、姉のアマテラスは天の岩戸に隠れるでしょ」
「はいはい、古事記ですね。突っ込みどころ満載です。あなたもそうですか」
「そうです」
「では、どのような」
「はい、田を荒らしたり、機織りをメチャクチャにしたり」
「えっ、そんなこと書かれてましたか」
「読んでませんが、聞いた話です」
「はいはい、それが何か」
「高天原ではもう田圃があったり、機織りもあって、服なんかも作っていたんですが、その前はどうなんですか」
「はあ?」
「だから、最初から稲作なんですか。その前に縄文時代があったような気がするし、石器時代とかも。高天原にもそんな時代があったはずなんですが、それは何処に書かれているのですか。聞いたことがありません」
「アマテラスが最初じゃなく、もっと上の世代の神々がいたのですよ」
「知ってます。イザナギとかイザナミでしょ」
「そうです」
「柱が出て来ますねえ。その周りを回って子供を産んだとか」
「そんな話、ありましたか」
「読んだわけじゃないが、聞きました」
「はい、それで」
「どんな柱なのですか。建物の柱なら、もうその時代、家があったんですね。竪穴式じゃなく」
「だから、イザナミ、イザナギの前にも神様がいたのです。その上の世代は、お一人でも、長い」
「でも国産みの神様でしょ。棒か何かでかき混ぜて、淡路島を最初に作った。しかし、建物があったんでしょ。柱が」
「だから、そこはこの地上とは違う世界なのです」
「ああ、天ですか」
「そうです」
「地上はまだドロの海なのに、天では柱がある家があるんですねえ」
「はいはい」
「柱を作るには道具がいるでしょ。家を立てるにも、道具がいる。だから、そういうのが最初はなかったはずなので、一番最初は何もないところから初めて貰わないと」
「いやいや、だから、それは神話なのです。神話が作られた、書かれた時代の読者に分かりやすいように書かれているのです」
「スサノウは海を任かされたのでしょ」
「そんなこと、書かれていましたか」
「聞いた話なので、曖昧ですが。海を任かされていたと聞きました。その後、あまり海での活躍話がないような気がするのですが」
「それは、あなた、間違って聞いたのでしょ」
「そうですか」
「神様の最初は、素っ裸が妥当かと。最初から服を着ているのでは、その服、誰が作ったのか、デザインは誰がしたのか、なんて考えると、変になります」
「それはただのイメージです」
「天地創造もそうです。何か、既にできあっている上に神様が登場してくるような。だからです。人類がまだ出る前の本当の天地創造時代は、服なんてなかったと思うんですよね」
「はいはい、神話というのは、そういう風に読むものではありません」
「そうなんですか」
「そうです。それは野暮って言うものです」
「野に暮らす、ですか。やはり野から始まるでしょ。人類も。アフリカあたりから、だから、人の形をした神様は、アフリカの人に近いんじゃなですか」
「はいはい、お好きなように想像しなさい」
「そうします」
 
   了


 



2015年5月27日

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