小説 川崎サイト

 

裏通り商店街


 商店街の裏側に崖がある。山の中の町ではないが、起伏があり、高い目の石垣程度の段差ができている。その裏道も商店街の一部で、車が入れないほど細い。商店街のメイン通りは寂れ、整骨院やマッサージの店だけが繁盛している。一番最初に潰れそうな布団屋が残っており、ここで枕カバーを買うと他の店の数倍の値となる。どんなブランド品かと思うほどだ。大型小売店で買えば三枚は買えるだろう。高くても買う人がいる。
 メイン通りが寂れているので、当然裏通りはさらに、と思うだろうが、そうではない。こちらの方が結構店屋は開いている。飲み屋や食べ物屋が続いており、中には茶碗屋がある。これは商売にはならないはずなのだが、毎朝店の前に台を置き、そこに茶碗や皿を並べている。これが老人の日課になっているのだろう。店内にはそれなりに高い品があるようだが、この老人のコレクションを展示しているようなものだ。こういった瀬戸物は腐らないため、割らない限り、いつまでもあるのだろう。客の姿は滅多になく、あっても表の安い茶碗や皿を買う程度だが、それでも一般のものよりも高い。
 この路地裏通り商店街の方が人通りが多い。人というより自転車だ。それはメイン通りのアーケード内は自転車進入禁止という自殺的なことをしたためだろう。だから、その道筋を利用していた人は、この裏道を走るようになったのだ。
 この裏通りは普通の家も混ざっているのだが、その玄関先に八百屋ができていたりする。
 メインよりもサブ、表よりも裏の方が人が多く活気がある。いつの間にかアーケード付きの豪華なメイン通りは洞窟のようになり、閑古鳥の巣が傘屋跡にできた。コウモリ傘と関係するのかもしれない。それが飛び出すともういけない。何とか営業を続けていた布団屋も店を閉めた。残るは整骨院、マッサージ、リハビリ、整体、ヨガ、ダンスや占いなどの店だけになった。昼間も薄暗い商店街にそれらの店の赤やピンクの看板がまるで風俗街のように煌めいている。
 実際若い男性が店の前に立ち、客引きしている。ただし、指名はできないようだ。
 中でも整骨院やほねつぎの店の骸骨の絵入りの看板が目立つことから、ここを白骨街道と名付けている人もいる。
 それで裏側の通りは繁盛し、意外な展開で生き残り、メデタシメデタシとなるのだが、実際には消防法の関係から、消防車が入り込めないため、崖際の店は取り壊された。
 今は、この場所はマンションが墓石のように林立し、昔を偲ぶものは、もうない。
 
   了

  

  


2016年2月14日

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