小説 川崎サイト

 

ガード下の送迎バス


 大都会の駅近くにあるガード下の道路。上は線路が幾本も走っているため、結構長い地下道のようなもの。当然大きな道が走っている。そこは駅の裏側へ出る近道で、最短距離で抜けられる。駅は駅ビルとなり、何処が駅なのかが分からないほど。これは真っ直ぐ駅向こうへ行くとなるとショッピング内での迷路抜けとなる。しかしガード下のトンネルを使う歩行者は少ない。なぜなら排気ガスが凄いためだ。
 ただ、そのガード下の道路には色々なバスが入り込んでいる。路線バス、長距離バスの停留所はターミナルとして一箇所にあるが、ガード下には観光バスが乗り付けたりする。バスターミナルには入れないのだろう。
 その中には郊外にある大型家具店への送迎バスもある。これは無料だ。家具屋に用事がない限り、乗る人はいない。ただ、偶然その家具屋近くに住んでいる人なら乗りやすい。また、途中の大きな駅で客を拾うので、そこでも止まるが、そこで降りると、タクシー代わりに乗ったことが丸見えになる。
 その他にも放送局へ向かう送迎バスがある。これは結構遠いところにあるため、関係者や業者が乗る。
 ガード下の一車線をバス停のように使っているが、これは一時停止扱いとして、何とかなるのだろう。タクシーのようなものだ。駐禁で止められないということではタクシーなど営業できない。当然止まった瞬間、さっと客を乗せ、さっと出る。待ってくれない。
「本当ですか」
「見たのです」
「ほう」
 あの世への送迎バスではない。どちらかというと、極楽行きだ。
「ここから乗れるのですかな」
「そうです。見ました。まあ、見るなと言っても派手な車というか、車体の絵が目立ちすぎますからねえ。街中であの絵はいけないなあ」
「トラック野郎のような」
「そこまで大きくありません。マイクロバスです」
「時間は分かりませんか」
「さあ、適当でしょうねえ」
「止まっても、すぐに発車するのでしょ」
「そうです」
「時刻表があればいいのですが」
「一度乗れば分かります。また着いた場所でも分かるかも」
「時刻表が書いてあるのでしょうか」
「さあ、乗ったことがありませんから、分かりません」
「ほう」
 彼らが言っている送迎バスとは、ストリップ劇場のもので、もう何年も前の話だ。それを最近見たというのだから、まだ送迎行為をやっているのかもしれない。
 ガード下の共同バス停、何が入ってくるのかは分からない。
 
   了




2016年8月13日

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