小説 川崎サイト

 

予備軍


「一休みですね」
 予定到着地点に着いた部隊がある。
「一休さんだなあ」
「ああ、偉い坊さんでしょ。この橋、渡るべからずの橋の中央部を渡る。端は通っていない」
「そうそう、頓知の人です」
「それよりも、休むというのが良い。ただし一休みなので、すぐにまた動かないといけないがね」
 この部隊は予備軍で、後詰め部隊。念のため、救援が必要なとき用で、前線で戦うようなことは先ずない。
 しばらく待機していると、無線が入り、とりあえず前線の後ろ側に付けと言うことだった。戦いは有利に進んでおり、あとは敵が諦めて引き返すのを待つだけだが、この予備軍が加わるとだめ押しになるだろう。
 いつものことなので、気楽に前線方面へ向かったが、敗走兵が隊をなさずに戻ってくる。
 前線で何かあったのだ。
 敗残兵に聞くと全滅らしい。予備軍の部隊長は無線で本営へ問い合わすと、急だったという。どうやら、前線は壊滅。自分たちはどうすればいいのかと聞くと、前線で戦えと言うことだ。
 予備軍は緊張した。しかし、命令なので、行くしかない。
 前線に到着すると、堡塁には誰もいない。もうみんな退却したようだ。前方にも敵はいない。
 倒れている兵に聞くと、敵は人ではないらしい。見たこともない生物がいきなり攻撃してきたらしい。鳥もいたとか。
 敵は堡塁を越えてまでは攻めて来なかったようだ。
 結局化け物が襲ってきたので、驚いて逃げたらしい。
 先ほど一休さんの話をしていた部隊長は、その化け物部隊を分析した。その結果、敵軍の予備軍のように思えた。自分たちが予備軍として駆けつけたように、敵も予備軍を使ったのだ。
 
   了





2016年10月1日

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