小説 川崎サイト

 

引きつけの法則


 思えば叶えられる。楽な話だ。思っているだけでいいのだから。しかし、常日頃から思っていると、何等かのチャンスで、さっと実行できるかもしれない。だが、しないかもしれない。思っているのだが、思いが強いほど、さっとできなかったりする。
 これは腹が減っている場合、それは思いと言うほどのことではないが、腹が減っていると思っているだろう。思っていようがいまいが、すぐに食べるだろう。この場合も腹が空きすぎて逆に食欲が飛んでしまっていることもある。減りすぎてバテたのだろうか。
 成功への秘訣は、思い続けることで、そのため、叶えられる確率が一パーセントほど増えるかもしれない。この差は結構ある。あまり思っていない、望んでいない人と戦ったとき、実力が同じなら、一パーセントの差で勝てる。ただ、相手も同じように思っているのなら、引き分け。そうなると、より思いの強い人が、その一パーセントに少しだけ上乗せされるため、思いの強い人の方が勝つ。
 という話を永田は先輩から教わり、実行してみることにした。常に望み、常に思い続けておれば運を引き寄せられるというものだが、思っていない人に比べ、一パーセントの増量なので、大したことはない。宝くじが当たる確率が一パーセント高くなる程度。
 しかし、この僅かなピン差で勝てることがある。だから、いい未来を引き寄せ、運を引き寄せ。好ましいことを引き寄せられるように、常日頃から念じ続けよと先輩のアドバイス。
 所謂先輩がいうのは引き寄せの法則のようなものだろうか。永田も聞いたことはあるが、どんな法則なのかは知らない。
 そして先輩に教わったのは、妄想のような瞑想。そのやり方はエジプト式らしく、座った状態で、片膝を立て、背を反り、左へ捻り、首だけ右へぐっと回す。まるでプロレスのコブラツイスト状態。
 この状態で、その姿は三角になり、ピラミッドパワーも入る。そして、宇宙のエネルギーを吸収するため、その状態で身体を微動させる。要は貧乏揺すりだ。その振動が波動となり、思いと同期し、思いが具体的に作動する。これは波動なので、物理現象だ。銀行の利息に比べれば一パーセントは大きい。
 永田はやる気満々で、全身全霊で、そのスタイルになり、身体を細かく振動させたり、背筋を反らして捻り、首をぐっと回すため、思い切り力を入れた。
 結果、運を引き付けたのではなく、引き付けを起こした。こぶらがえりのきついのが来たようだ。
 望みは叶えられる。しかし、思っていないことで。
 
   了

 

 


2017年1月31日

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