小説 川崎サイト

 

狸田村


 狸田の村はよくあるような村で、国中至る所にある地形のため、特徴がない。山また山だが、全てが山岳地帯ではなく、僅かながらも平地がある。これは山の斜面に近いのだが、上から見ると広い川底のような膨らみ。当然住んでいる人も少ない。そういう村々が点在する中の一つが狸田村。ここに村ができたときから戸数は百を超えない。それ以上養えないこともある。家ばかりで田んぼがなくなってしまう。田や畑は極限に近いほど山を這い上がっている。棚田というほどの美田ではなく、上の方は果樹園や畑。
 その上は結構高い山塊で、斜面もきつくなる。狸田の由来はその山に住む狸から来ている。
 この村を開拓したのは狸だと言われているが、そんな話は誰も信じていないが、狸が先祖らしい。先祖の神様は誰でもいい。動物でもかまわない。
 御山の狸が沢に降りてきて田畑を耕していいる姿を想像すれば、それはお伽噺。しかし偉い狸だろう。自分で食べるものを作っているのだから。人里に出てきて作物を頂戴するのではなく、自給自足だ。
 狸田村の氏神様は当然狸。狸の田んぼだったのだから、当然だろう。そしてこれがご先祖様になるのだが、狸から人間への進化は難しい。だから所謂アミニズム。狸を先祖にしようと誰かが決めた。戸数が多いときは百戸あったのだから、百家族が住んでいたわけではないが、全て縁者のはず。そうでないと村の氏神様とはならない。
 御狸様に遠慮してか、この村にはお稲荷さんはない。それらしい小さな鳥居や祠はあるが、お稲荷さんではなく狸が祭られている。
 全て親戚のような村なので、本家がある。あとは全て分家の分家。そして本家の屋敷を狸御殿と呼んでいる。実際にはこの本家、直系は何度か絶えているのだが、分家から養子をもらい、何代も続いているが、それほど古い家系ではない。
 狸を祭る神社は他にもあるが、それが先祖だと言い切る神社は滅多にないが、これは言い出さないだけで、蛇でも鳥でも何でもいいのだ。何処かで決めただけのこと。
 その気で、この村を訪ねれば分かるが、村人のどの顔も狸顔。細面の狐顔の人さえ狸に見える。目がまん丸で鼻の低い人が多いためだろう。
 狸を先祖とする一族が、この村を拓いたのではなく、拓いてからしばらくして、村らしくなった頃、先祖を狸と決めたらしい。そのため、この一族の出身地の先祖神ではない。故郷を離れてから先祖神を作ったことになる。
 しかし適当に作ったとしても、何代にも渡って狸を拝んでいると、狸に似てくるのだろうか。動物が飼い主の顔に似るのか、飼い主が動物に似るのか、どちらかは分からないが、それに近いものがある。
 
   了

 


2017年2月27日

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