小説 川崎サイト

 

超常現象

 
 語られている怪談よりも、それを語っている語り部の方が怪しい場合がある。なぜなら、大きな嘘をついていたり、また話に矛盾があるためだ。怖いのは怪談ではなく、語る側にある。
 そのため、怪しげな人が語ると、全て怪異談になったりする。話そのものが怪異談で怖い話でなくても怖い。それは現実には有り得ない話になっているためだ。これは単に語り手がうっかりしているだけのこともある。事実関係を間違ったとか、後先があべこべになっていたとかだ。ここは本来怖くはない箇所だ。
 話そのものが怪談で、内容が怪談ではない。語り方が怪しいので、怪談となる。これは別の怖さがある。本来持っている怪談の怖さではなく、有り得ない話になっているためだ。有り得ない話をするのが怪談だが、普通の話でも有り得ないことが起こっている。
 たとえば三人の人物が部屋にいるとされているのだが、三人目の人に触れないまま終わる。実は三人目の人について語るのを忘れていたのだ。そして三人目の人は怪談とは関係しない。いなくてもいい人物だ。それなのに、部屋に三人いるとなっている。そして怪異が起こるが、その怪異よりも、最後まで触れられていない三人目の人物の存在が怖かったりする。
 また登場人物の言葉が男性から女性に始終変わっていたりとかも。これは語る側のミスなのだが、こちらの方が本筋よりも怖かったりする。
 怪談に限らず、普通の話でも、そういったおかしなことが起こっている。ある現場へある人が駆けつけるのだが、距離と時間、交通機関などを考えれば、無理なことがある。そこまでどうやって来たのか。これはものすごい乗り物を使ったのか、ワープでもしたのだろうか。
 またヒロインが曲者に襲われる直前、間一髪で手裏剣を投げて助ける人がいる。用心棒のようなものだが、常にヒロインを遠くから守っているのだが、これは尾行に等しい。しかも四六時中。そうでないと間に合わないだろう。さらに誰からも気付かれないように護衛するわけなので、これはものすごい労力だけではなく、技術もいる。
 当然、偶然の同時多発。これはもうホラーよりも凄い現象が起こっているに等しい。超常現象を見る思いだ。
 世の中には不思議なことが多いが、普通の話でも不思議なことが起きている。
 
   了

 




2017年6月30日

小説 川崎サイト