小説 川崎サイト

 

三つ巴

 
 立花氏と八幡氏は同程度の勢力で、力関係もほぼ同じ。倉田氏は両氏よりも劣るが、この三氏が勢力争いをしていた。
 立花氏と八幡氏はまともに戦えば消耗戦になり、相打ちに近い関係となる。そこを倉田氏に攻め込まれるとひとたまりもない。
 立花氏も八幡氏も戦わないのは、それを恐れてのことではなく、勝敗が分からない戦いはしたくないのだろう。それで二氏とも第三勢力の倉田氏を味方に付けようとした。
 これで二大勢力の均整が破られ、一方は負けるだろう。そして勝利後、味方にしていた倉田氏を倒せば全て手に入れることができる。
 もし立花氏と八幡氏が手を組めば、簡単に倉田氏は倒せる。組まなくても倒せるだろうが、立花氏単独で倉田氏を倒しにかかると倉田氏を助けに八幡氏が援軍を送るだろう。
 立花氏と八幡氏が同盟し、倉田氏を倒した場合、今度はまた立花氏と八幡氏の戦いになり、これは互角なので、勝負が付かない。
 弱小の倉田氏が生き延びるには、立花氏と八幡氏が泥沼の戦いになることだ。そのため、何度もそれを仕掛けている。両者がつぶし合いをする時を待っているのだ。
 しかし、その前に立花氏も八幡氏も倉田氏を味方に付ける動きが活発。一方を倒したあと、味方の倉田氏を倒すのはたやすいことのため。
 弱小の倉田氏がなかなか亡びないのは、そういった力関係のためだ。
 では弱小の倉田氏が立花氏か八幡氏を攻めた場合はどうなるか。これは無謀な作戦のため、負けるだろう。そして、どちらかの勢力が倉田氏を吸収し、一方の勢力を倒してしまうはず。
 だから、この三氏は戦わないで同盟を結んだ。
 三氏とも平和主義者ではない。勝ってもそのあとのことを考えたりすると、戦うと損なだけ。
 結局余計な動きを続けているのは弱小の倉田氏で、今も立花氏と八幡氏が戦いになるよう、あの手この手を使っている。当然二大勢力はそれが分かっているだけに、相手にしない。
 同盟は結んでいても、水面下ではゴソゴソやっているのだ。これをやり過ぎると、立花氏と八幡氏が組み、倉田氏を倒すことになる。そして倉田氏の版図を等分することになる。
 そうならないように倉田氏は、懸命に二大勢力が組まないように、仲違いが起こるような噂を広めたりしている。
 本来、立花氏も八幡氏も互いに倒して、三大勢力を纏めたいところなのだ。だから仲は最初からよくない。それを諦めて、二氏で等分する方を選ぶ方がいいのだろう。
 欲張ってはいけない。
 
   了



2017年7月11日

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