小説 川崎サイト

 

気怠い話

 
「今日もだるいですなあ」
「おや、どこか」
「いや、夏の終わりはいつもだるいのです。身体がだるいと気もだるくなります」
「身体が先ですか」
「そうです。だからその様子を感じて、気も重くなります。これは元気がないのだな、とね」
「気怠いわけですね」
「左様です」
「じゃ、いつもと変わらないのでは」
「いや、そこからさらに底へ向かう感じです。特に今日のような雨が降るか降らないか中途半端な天気のときは低気圧の影響もありますからね。それにやや蒸し暑い。これで、身体も気もどんどん重くなっていきますよ」
「今日は雨が降るらしいですよ。結構本格的に」
「じゃ、降ってくれた方がすっきりしますよ」
「それまでこの天気です。なかなか降らないで、このまま」
「じゃ、ますます体調が悪くなりますよ」
「それはどうすれば治るのですか」
「天気が回復すれば治ります」
「それで治ると」
「はい、それに気怠さを治す薬はありません。元気の出るドリンクを飲めば、一瞬そんな気になりますが、すぐに戻りますよ。余計なことをしなくても、待てば治ります」
「しかし、治られたとしても、あまり変わらないのでは」
「はあ?」
「だから、ずっと気怠い人ですから」
「私がですか」
「そうです」
「そうですなあ。元気なときでも、だるそうにしてますなあ。これは癖です。本当は元気なのですよ」
「紛らわしいですねえ」
「気怠さから抜けても、また気怠くなりますから、もうずっと気怠い状態を維持しているのです」
「はい」
「私の敵は低気圧です。これが一番の強敵でしてね」
「でも本当に体調を崩されることもあるでしょ。低気圧とは別の病気とか」
「ありますよ」
「本当はそちらの方が強敵なのでは」
「そうですなあ」
「それよりも気怠さはいいのですが、納期は大丈夫ですか。二週間ほど遅れていますよ」
「そんなになりますか。ここんところ気怠くて」
「なるほどそれが遅れの理由でしたか」
「いや、もう準備はできていますよ。いつでもお渡しできますが」
「おお、そうなんですか」
「それよりもあなた、催促が遅いですよ」
「え」
「もう、いらないのかと思いまして、今日は持って来ませんでしたが」
「一寸カレンダーを見ます」
「確認してください。一向に催促してこないので、もう取引しないのかと思い、私もそのままにしていたのですよ」
「本当だ。これはうっかりしていました」
「しかし、今日は気怠いですなあ」
「はい、気怠いです」
 
   了

 


2017年9月12日

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