小説 川崎サイト



アレアレ

川崎ゆきお



「アレだったらどうする」
「そんな失礼な」
「でも、どうする?」
「確立の問題だよ」
「確率高いと思うな」
「そうなの?」
「想像だけどね」
「大丈夫だと思うよ」
「このファミレスの客、よく見ろよ」
「どうして?」
「似たり寄ったりだと思う」
「じゃあ、いい感じだ」
「こういうところに出てきてるタイプと、そうでないタイプがいる。だから同じじゃないんだよ。ここに来てる連中は上物だよ」
「心配はないさ」
「もし、アレならどうする? 覚悟してないと駄目だよ」
「それは失礼じゃないか?」
「君はアレでもいいんなら大丈夫さ。僕も余計なことは言わない。ただ、無邪気そうに喜んでるから、注意しただけさ。で、他にいないの?」
「いたけど、駄目だった」
「写真は?」
「あった」
「並?」
「ああ、普通かな」
「で、いけるのには写真がない」
「そうだけど」
「それで確定だ」
「僕も写真はない」
「うん、ないほうがいいね」
「嫌なんだ。写真が」
「それはよく分かるよ」
「写真判定は嫌だ」
「きっと同じだよ」
「何が」
「相手も」
「じゃあ、やっぱりアレか……」
「アレである確率が高い。それでもいいの?」
「その前の段階だし」
「でも、アレならどうする」
「範囲がある」
「はい、寛容範囲ね」
「それで我慢するかも」
「寛容範囲を数段下げないと駄目な場合は」
「苦しいなあ」
「そういう苦行がしたいの?」
「望んでいない」
「でも、万が一ってことがあるからね」
「そうだろ」
「万が一アレと逆方向の可能性も否定しないけど」
「いや、上物でなくてもいいんだ。普通なら」
「僕はきっとアレだと思うよ」
「アレアレって言うなよ……僕らもアレなんだから」
 
   了
 
 
 


          2007年5月30日
 

 

 

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