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お大事に

川崎ゆきお



「どうなんでしょうねえ?」
「何?」
「いや……」
「何か気になることでも?」
「それそれ」
「どれっ?」
「尋ねてくれることが」
「それが、それなの?」
「気にしてくれていることが」
「読めないけど」
「つまり、僕が気にしていることに興味を持ってくれたことが大事なんだ」
「分かりにくいなあ。ただの突っ込みだけど。聞かれたから返しただけの話さ」
「だから、こういう会話の次元が貴重なんだよ」
「普通じゃないの?」
「もっと無関心だよ」
「だって、仕事仲間だから、話ぐらいするさ」
「でも、普通は本気に聞いてくれないよ」
「今まで、どんなところで働いていたんだ」
「ここと同じような会社だけど、君のような同僚はいなかったなあ」
「機械相手かい?」
「うん、そんな感じ」
「それで、何が気になるの?」
「どうなんでしょうねえ?」
「だから、何が?」
「自分と関係ないことは、ないのと同じかな……と」
「はあ?」
「興味のないことは、ないのと同じ」
「遠回しな言い方だなあ」
「自分の世界があるんだなあと」
「あのね……」
「何?」
「前の会社でも、そんな話をした?」
「ああ」
「どうだった」
「無視された」
「最初からじゃないだろ」
「五分持たなかった」
「相手がだろ?」
「そう」
「そういう話、しないほうがいいよ」
「無駄話はだめなの?」
「聞いて面白い話がいいよ」
「面白いと思うけど」
「面白がる人もいるだろうけど……」
「君は駄目か?」
「それって、言い切ると、おかしくなるからさ」
「興味がない?」
「ギブアップ。さあ、仕事に戻ろう」
「また、話してもいい?」
「話の話は話さないのがいいと思うけど」
「それそれ、そういう話が大事なんだ」
「はいはい、お大事に」
 
   了
 
 


          2007年6月14日
 

 

 

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