小説 川崎サイト

 

豪族


 陣触れがあり、その村も兵を出さないといけない。二十戸ほどある。本来なら全戸出さないといけない。
 これは徴兵ではない。ここの村人は流れ者ばかりの傭兵。つまり雇われ兵。しかし、戦のときだけ銭で雇っていたのだが、終われば、いなくなる。
 戦は始終あり、常雇いとしたいのだが、そんな費用はない。だが、いなくなると困る。
 そこで土地を与え、自活できるようにした。当然年貢は取らない。銭の代わりに田畑を与え、それで食って行けと言うことだ。そのため、流れ者が定住するようになった。
 つまり戦がなくても食べていける。その代わり普段は百姓をしないといけないが、元々土地を失ったり、最初から持たない連中なので、有り難かったのかもしれない。
 食べるために足軽をやっていたのだが、足軽をしなくても食べられるようになった。しかし、戦のときは出ないといけないが。
 その陣触れが来たのだが、動きが怪しい。
 怪しいのは村人ではなく、雇い主の方。どうも勝てそうな戦いではない。彼らの仲間には間者のような者がいる。ただの情報屋だが、今回の戦い、負けそうだとの報告。
 城から若侍が来て、集合をかけた。出てこないので、連れに来たのだ。この若侍が指揮官となり、その命令通り動かないといけない。武器のほとんどは弓と槍。いずれも戦いのとき、簡単な防具といっしょに支給される。
 しかし村人達は拾ったり略奪したり盗んだ武器や防具や馬まで実際には持っているのだが、それは使わない。それらは自分たちの戦いに取ってあるし、売れば金になる。
 村の長は、この若侍を信じていない。一隊を指揮するには若すぎる。
 村の長は、年を取っているだけの人で、足軽の頭は別にいる。しかし指揮権はない。勝手な戦い方をされると困るので、城の侍が指揮を執る。
 村の長は困ったが、断るわけにはいかない。それが契約なのだ。戦って手柄を立てても、それはこの若い指揮官のもの。常雇いの傭兵なのだから、それは分かっているのだが、田畑をもらい、そこで暮らしていると、もう百姓でもいいかと思うようになったようだ。
 頭が村の長に代わり、若侍に掛け合った。今回は出ないと。
 こういう村が複数あり、その足軽達が、この領主の主力軍と言える。実際に戦うのは足軽なのだから。そのため、城の侍よりも足軽の方が当然多い。圧倒的に多い。
 それで、今回は不利なことが分かっていたので陣触れに応じない村が結構出た。忠誠心はない。
 戦いは案の定負け、領土も奪われた。
 それで、普通の村は、その新領主のものになったが、傭兵村はそうはいかなかった。新領主の雇兵として、同じ条件で従う村もあったが、何処にも所属しない村ができた。
 年貢を払う必要はなく、陣触れもない村。それらの村が連合し、党と呼ばれるようになる。豪族だ。
 浮き草の流れ者の傭兵に土地を与えたため根付いてしまったのだろう。
 山賊や盗賊のようなことをする豪族も出てきたが、ある豪族が橋の上で寝ている少年を蹴飛ばした。暗くて分からなかったのだろう。猿に似た小男。のちの太閤秀吉。これが縁で猿の雇兵となり大名にまで上った者もいるらしい。
 
   了
 
 


2019年2月20日

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