小説 川崎サイト

 

連休の明けない五月


「連休は明けましたかな」
「まだですよ」
「有り難う。もう明けたのかと思っていました」
「そうですか」
「去年なんて、いつまでも連休が続いていましてねえ」
「春の大型連休ですからね」
「いや、それが終わらない」
「え、何がです」
「連休が一向に明けない」
「それはあなただけが休んでおられるのでは」
「そうだったかなあ」
「そうです」
「去年の連休は明けなかっただけじゃなく、次の盆休み。これもなかなか盆が明けなくてねえ。難儀しましたよ。いつまで盆休みなのかと、呆れるほど長い」
「それもあなただけでしょ。でもお盆は明けたでしょ」
「明けたのかなあ」
「年も明けたでしょ」
「ああ、年は明けました。それで盆休みのことなど忘れていましたよ」
「年は無事、明けたのですね」
「はいお陰様で」
「それはなにより」
「それよりなかなか冬が終わらなくてねえ。まだ続いています。春なのにねえ」
「今日など暖かいですよ。暑いほど」
「そうでしたねえ。気が付けば冬も終わっていたんだ」
「次は何でしょう。おそらく梅雨でしょ」
「そうなんです。梅雨がなかなか明けなくてねえ」
「そう来ると思っていました」
「雨がやまない」
「お盆の頃は?」
「降ってませんでしたが、梅雨だからって、毎日降ってるわけじゃない」
「じゃ、梅雨はずっと明けないままですか」
「そうです。明けたと思いしや雨」
「梅雨じゃなくても雨は降りますよ」
「そうですなあ」
「冬に雪が降ったでしょ」
「はい」
「あれも梅雨ですか」
「はい、白い雨」
「うーん」
「ところで今、連休のどのあたりでしょう」
「半ばを少し過ぎた頃ですよ。もうすぐ明けますよ」
「はい、ご丁寧に有り難うございました」
「いえいえ」
 
   了

 


2019年5月5日

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