小説 川崎サイト

 

ポイント獲得


「何かありませんか」
「ありません」
「それは平和でいい」
「小さいことは色々とあるのですが」
「些細事で結構。どのようなことで」
「言うほどのことではありません」
「是非お聞かせ下さい。手助けできることなら」
「だから、言うほどのことではありません」
「遠慮なさらず」
「だから、人に言うようなことじゃありません」
「人に言えないほど、凄いことですか。じゃ、小さなことじゃない。重大なことなんでしょ」
「小さすぎて、言うほどのことじゃないという意味です」
「小さい?」
「はい」
「もの凄く小さい?」
「それほど小さくはありませんが、小さい方です。だから些細事」
「蟻の穴から堤防が崩れるって事もありますから」
「崩れません。そういうの見ましたか」
「たとえ話です」
「まあ、そんなことがあるかもしれませんねえ。一寸したことなので、大事に至らないと、気にも留めなかったことが、重大事への入口だったりします」
「そうでしょ。その可能性もあります。是非お聞かせ下さい」
「あなたは、何でした?」
「人を助けたいのです」
「助けて欲しいときは言います」
「そこを是非」
「じゃ、言いますがね。背中が痒いのです。手が届かない」
「分かりました」
「しかし、どうして、人を助けたいのですか」
「功徳が足りないので、纏めて獲得するためです」
「ポイントを溜めるようなものですね。あ、そこじゃない」
「違いますか」
「そこは痛い。その左横が痒い」
「はいはい」
「しかし、この程度では僅かなポイントしか付きませんよ」
「そうなんです。しかし、僅かでも徳が増えれば、徳を積むことになり、少しはましでしょ」
「要するに、助かりたいのはあなたの方で、私は今、背中をかいてもらうことで、あなたを助けているようなものですねえ」
「はは、そうなりますかね」
「どちらのポイントが高いのでしょう」
「さあ」
 
   了



 


2019年5月26日

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