小説 川崎サイト



家庭内乱

川崎ゆきお



「荒れているのかね?」
「戦争ですよ」
「家族が割れ、内乱状態か?」
「はい」
「しかし、そんなことをよく私に話すねえ」
「はあ?」
「家庭の事情だろ」
「それが原因で仕事に支障が……」
「それは上司としては聞けないねえ」
「でも、仕事が」
「仕事と家庭は別の問題だ。家庭が荒れていても勤まるでしょ」
「何か原因あるのかと聞かれたので、理由を言っただけです」
「よく言えるねえ。そんなことを」
「では、言わなかった方がいいのでしょうか」
「会社は君の家族のトラブルには関わらない。そこまでフォローできない。当然でしょ」
「でも、内乱状態なのです。三つ巴の戦いで、昨日の敵は今日の味方。明日、また裏切る。誰もが居場所がない」
「何を言ってるんだ」
「家の様子を語っています」
「それ以上は聞かない。聞くとしてもそれはプライベートでだ。だが、君は飲みに誘っても来ない。仕事以外の付き合いはしない。だから、君とのプライベートな関係もない」
「はい」
「だから、私はフォローする気もない」
「父が僕の部屋を占領しました」
「まだ、言うか」
「僕は弟の部屋に逃げ込みました」
「もういい」
「母は、父の書斎を占拠し、洗濯物を干しています」
「やめろ」
「そんな状態だから、落ち着かなくて、仕事に熱が入らないのです」
「くどいがそれは君の家庭の問題で、会社の問題じゃない」
「叔父が援軍に来てくれましたが、そのまま居着き、ダイニングの一角を占拠しました」
「何が原因なんだ」
「聞いてもらえるのですね」
「そうじゃないが、よくある話じゃない」
「三階に閉じ込めていた大爺ちゃんが二階の爺ちゃんを攻撃中です」
「君?」
「はい」
「まともかね」
「有り様を語っています」
「だから、原因は何だ?」
「忘れました」
「それで家族や親戚も巻き込んで暴れておるのかね」
「もう、夢中になりますよ。寝不足状態です。僕は三階の大爺ちゃんを攻めて、部屋を取る作戦でいます。面白いですから、課長もやられては」
「えっ?」
「家庭内乱2です。古いパソコンでも動きますよ」
 
   了
 
 



          2007年7月21日
 

 

 

小説 川崎サイト