小説 川崎サイト

 

足場


 人は二本足だが、腕を加えれば四つ足になるが、この場合は四つん這い、歩くというより這うことになる。幼児のハイハイ、四文字だ。
 二本足で立っているが、一本では長く立っていられない。地に足を付けるとは、片足ではなく、両足。
 これは肉体的な話だが、足場とか、立場とかもある。立ち位置とかも。実際にそこに立つ場合もあるが、序列があり、席がある。座る場所が身分や上下関係で決まっている場合もあり、そのときは足場ではなく座り場になる。これは具体的な尻の置き場所だろう。
 しかし、多足の虫がいる。ムカデなどがそうだ。二本よりも多く、四本よりも多い。足を着ける場、足場は多いが、本体から離れたところではない。本体とくっついているため同じ場所。
 ところが人は複数の場に足場を持っている。属しているところが複数ある。
 色々な場に足を運び、色々な場所に足場を持っている。所属とか、帰属とか、その足場での位置は違うが、足を伸ばし、手を伸ばし、舌も伸ばしている。当然触角も。そういうものは人には出ていないが、触手というやつがあり、手のようなものを伸ばしたり、引っ込めたり、また角度を変えたり、探したりする。
 しかし、メインとする足場があり、これは職種とかに多いが、プロフィールとして、ざっくりと書かれているものだ。それが肩書きになっているのもある。何もなければ、誰某の子とか、誰某の兄とか、弟とか、妹とか、伯父とか叔母とか、そういった係累も立派な足場だ。実際にはこれはずっと続く足場でもある。要するに家族や親戚のこと。
 ただ、そういう足場から出て、別のところで、色々と足場を拵える。世間に出て仕事をすれば、それなりの足場ができる。
 建物を建てるための足場組みだけではなく、仕事をするための足場作りもある。
 こういうのを見ていると、身体が出てくる。足がそうだし、肩書きの肩がそうだ。
 肩を貸すと言っても、本当に肩を貸すわけではない。まあ、負傷した人に肩を貸すことはあるだろうが。
 肩入れをする。肩を組む。いずれも肩を使って何かをするわけではない。本当に肩を組み合ってもいいのだが、そういう肉体的なことではないところで使われる。
 簡単には上がれないところでは、足場が必要だ。足をかける場所。岩場などを登るときは、そうだろう。足だけではなく、手を引っかけたり、掴めるようなところも大事だが、この例では足場は次々に変わる。
 逆に進めない原因として足枷というのもある。それが邪魔をして足が出ない。
 住むところが変わると、足場も変わるだろう。もの凄く具体的に。
 仕事や何らかの活動のための足場に拠点というのもある。場所がいいのだろう。動きやすいような。また、人も集めやすいような、または関係する人が見付けやすいようなとか、色々と理由がある。
 しかし、それらは軍事用語だったりしそうだ。実際にドンパチやるわけではないが、別の戦争や戦いをやっているのだろう。
 悪い奴ほどよく走る、と言った人がいたが、これも足だ。
 悪い奴ほどよく眠る。こちらの方が有名だろう。そやつの足場はどうなっているのだろう。
 
   了
 
 


2019年12月29日

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