小説 川崎サイト



人脈診断

川崎ゆきお



「今一つ納得がいかない。すっきりしない」
「何がですか?」
「具体的には言えないがね」
「先方が何かを隠している場合が多いですよ。すっきりしないのは」
「あ、それは当てはまるね」
「当たりましたか」
「いいね、もっと続けて」
「または、やばいことがあるんですよ」
「いいねえ。そういうことだよ」
「社会はうまく機能するようにできているんですよ。何かが邪魔しないかぎり」
「その邪魔だよ。該当するねえ」
「これは一般論ですよ」
「充分当てはまるよ」
「じゃ、単純な理由でしょうね」
「たとえば?」
「流れをせき止めている内部事情のようなもの……とか」
「それだよ」
「分かりますか?」
「調べれば分かると思うが、外部からでは無理だろうね」
「すっきりしない人物は分かっているのですね?」
「彼かどうかは分からんが、その発言がどうもすっきりしない」
「では、その彼と繋がっている人の影響ではないですか」
「恐らくそうだろう」
「それはまともな方法では解決しないと思いますよ。すっきり運べない事情は、その背後の人間関係と絡んできます。そうなると人脈把握しないと解読できません」
「いや、一般論でいいよ」
「外部からでは窺い知れない事情です。よくあることだと思いますよ」
「うちの社にもあるかね」
「それはビジネスと言えるかどうかが問題なのですよ」
「と、言うと」
「好き嫌いです」
「ああ」
「気が合わないとか、嫌いだとか……そういうのは別の問題でしょ」
「まあね。しかし、それが影響するケースが多いだろ。別問題とは言えんと思うが」
「ですが、それが原因だとすると、太古の昔と同じですよ」
「ほう、そこまで溯るか」
「すっきりしないのは、その種の人脈が絡んでいると思いますね」
「その脈は見えんか」
「調査しますか」
「できるのか」
「脈を診るのは基本ですから」
 
   了
 
 



          2007年8月2日
 

 

 

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